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どうしたらこの組織を潰せるのだろうかと思ったが、うちの上司が相手は分が悪すぎて逆に踏み潰されるんだろうなと一応保留にしておく。
なにか言われたら今回のことでクレーム言おう。
絶対一言一句間違わずに。
扉の奥はさっきの部屋と違って清楚でもなくむき出しのコンクリートが打ち付けてある雑なところだった。
人に見られる場所でもないから凝らなかったんだなと一目で見抜く。
如何にも秘密組織っぽい作り。
ここが考察した通りの場所ならば、恐らくローを昏睡の状態から治した大陸だろう。
魔法があるから大陸を越えるのはものを揃えたりすれば短時間で可能だ。
結構な金額が必要だが。
そこまでしてここへ連れてくる価値は自分にあんのかねえ。
辺りを見回しても全く理解出来ぬものばかり。
だが、ここから出られるのではと手当たり次第に扉を開けては、外れを引く。
遂に手軽に出られそうな扉を回してキィ、と開けた。
ローがここに居る可能性もある。
生ぬるい感覚に背筋が痒くなる。
何故モブな己が巻き込まれているのだろう。
彼が無関係なわけない。

「よし」

出口らしき通行出来る廊下に出た。
そのまま手探りで歩む。
ずいぶん長く歩いたが、きっと安全を考慮して、隠したいものがあそこだったのだと思えた。
確かにあの部屋はこの世界の建築技術を考えるとかなり行きすぎていた。
絶対に異世界の存在がある。
それが誰だろうと、褒められた行為ではない。
やがて、お待ちかねの扉へ進む。
グッと手を付けて押すと別の部屋へ入る。
直ぐに外へ、とはいかないのが秘密基地の醍醐味なのだ。
簡単に出られては秘密の場所ではないし、なにより、ゲームではないのだから。
そう、ゲームではない。
それが今になって猛烈に違和感を抱かせる。
もう、ヒロインは原作から脱している。
流石にそんなに違えばどんどん作品の内容がずれてくると思うのだ。
なのに、ロー達の行動は忠実。

「あ、あった」

一つだけの大きな扉を見つけてやっと出られるとシナリオを元通りする為に開けた。
が、目の前にあったのはさんさんと照らしてくる太陽ではなく、どんよりとした曇りでもない。
憂鬱な雨でもなく、無感動に見つめてくるダークブラウンの二つの瞳。

「え?」

しとしとと見てくる彼はとても愛しく恋い焦がれ、会うはずがなかった存在。

「やっぱり捕らえられてたか」

そのずば抜けた推理でどこに閉じ込められているのか弾き出したのだろう頭脳を持つトラファルガー・ロー。
彼が絵にされ、名前をつけられた瞬間からリーシャの中に生まれ、育ってきた。
その彼が目の前に居て、きっと助けにきてくれたのだろうと嬉しくなる。

「ロー!もしかして迎えにきてくれたの?」

嬉々として飛び付いて胸に飛び込んでみた。
きっと拒絶されるか文句を言われるか避けられるか。

――ポス

「あ、れ」

今までと違い問題なく胸の中へ行けた。
柔らかく包み込まれた。
更にいうとローの手が背中にやんわりと回っている。
予想と半周りほど違う反応に戸惑ったが、これが好感度が上がった結果なのだと思えば納得だ。

「おー、遂に私の事を受け入れてくれたんだね」

きゃぴきゃぴとローを見る。

「思い出しただけだ」

「ん?」

「ドフラミンゴはお前が宿を取っている国を覇権した」

「は、あ?……え?」

いやいや、ドフラミンゴが完全に国を奪うのは早くても五年の月日が必要だ。
いくらなんでも無茶だろう。

「なに言ってるの?」

「おれ達が望んだのに今になって欲したものを忘れるなんて思いもしなかった」

ローの目はいつもよりもほの暗い。
うつらうつらとしている。

「この世界は意思がある。おれ達を造った違う世界の次元の存在を引きずりおろして、渇望したくらい手にしたかった」

怖くて口が開けない。
聞かなくちゃと言い聞かせた。

「見えざる存在はお前達をこちらへ下ろしてくれた。だが、それと引き換えにお前らが選べるように平等を期した。おれ達の記憶を書き換えてここまで来ないと記憶が戻らないようにしやがった」

クッと彼の唇をあげる。
自嘲の顔だ。
こんな、顔。

「ドフラミンゴは自分の女に他の奴へ情を向けているのが許せないらしい。お前を閉じ込めようとここ連れてきた」

ローの話はまるきり何を言っているのか分からない。

「自分を造った奴を完全にものにしたくせに贅沢な男だ」

ローは思う。
この世に生まれた時、リーシャを得たいともがいた。
しかし、彼女は別世界で、上位の世界の存在。
決して手に出来ない。
なので、ローのように作られたもの達は手に入らないのならばこんな世界に用はないと壊し出した。
手始めに己の遠い場所から。
半分ほど壊した頃、この世界の意思が危機を感じたのか提案をしてきた。
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