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カチカチと最後に開いた扉に近寄りゆっくりと押す。

――キィイイ

かなり重量があって女性の腕力では結構キツい。
しかし、このわけのわからない状況よりも進んだのだから良かったとは言える。
笑えないな。
こんなシナリオがなぜ己に迫ってしたのか分からないし、オリジナルもあるかもしれないのだ。
緊張もひとしおだ。
気温も寒くもなく暑くもない。
着替えさせられてもいない。

――コツコツ

荷物はないので魔術書は勝手に手元に戻ってくるので焦ることもない。
扉を潜っても同じ感じの謎解き部屋だったが、問題にならない。
この部屋も既に図面にあるので記憶にある。
普通に解いてさっきよりは記憶に若干薄かったので思い出すのが大変だった。
しかし、自分でもあやふやな部屋を再現しているので誰がこの部屋の設計に携わったのか段々絞れてきた。
どうみても――我がゲーム製作サークルの社長だ。
こんなにはっきり作れるということは、それを考えた人くらい。
確か、仲間からの情報からは社長はドフラミンゴの秘書をしているらしい。
またスゴすぎるポジションに就いたなと言うしかない。
良くなれたよねー。
というか、そんなの相手がよっぽど信頼してないとなれないやつじゃん。
ローの幼馴染枠ならどんなに良かったか。
羨ましいことこの上ない。
そして、一方のリーシャをこの部屋へ運んだ人物は脂汗をかきながら彼女が次々と謎を解いていくのを眺めていた。
予想を遥か、いや、予想していないレベルで扉を開く様はもう一秒も見ていたくなかった。
このことが上へ知れたりしたら。
その人物は殺気を画面越しに向けた。
そんなことになっているとは気付かないままリーシャはカパカパと扉を開いては出口を探す。
そろそろ出口があれば言いと思っている不意に頑丈でなにものも通さぬような扉が現れた。
銀行に有りそうな金庫の扉に似ている。
やっと外へ出られるのだろうかと開けようとするがびくともしない。
人が五人がかりでやるような扉なのだからわかってはいたが。
だが、扉が開きそうな謎解きも見当たらない。
どうしたものかと座り込もうとしたとき、体が本能的に足を曲げて下へ滑り込む。
後ろを向くと斧を持った男が血走った目でこちらを見ていて、斧が当たっていたら無事では済まなかった位置にある。
こんな人は知らないので、もしやどこかの組織に浚われたのかなと考える。
だが、それ以上思考する時間は与えてくれないようで、斧が違うところを通過する。
死ねと連呼する煩いこの男はなんなんだ。
うんざりしてから魔法書を呼び寄せる。

「稲妻よこいつをぶちのめせ!」

取り敢えず襲ってこないようにするためには気絶させるのが好ましい。
鉄製の斧を持っていたので外れることもなく電流が相手の体を全て流れ相手は黒焦げになって倒れる。
本当は半停止みたいにしておきたい。
斧を振り回す相手なぞに慈悲をやりたくもない。
また狙われるかもしれないのに。
生かしているのは単に質問したいことがたくさんあるからだ。
頑丈な鉄ロープを出してギリギリ詰めにする。
調節可能の尋問専用道具。
最初はぎゅぎゅぎゅっと。
一気に緩めて呻いていた男に問いかける。

「今から質問するから答えること」

「誰が言うかよ」

ところがどっこい。
自白魔法もかけておいたから喋っちゃうのだよ。

「名前は?」

「ランテオ」

「誰に雇われるの」

「ドフラミンゴ様」

二個も答えてしまったことにより彼はみるみる内に顔を青ざめさせて震える。
消されちまうよとか考えてそう。
この人の記憶を消すから相手に筒抜けはならない。
だが、尋問の手を緩めるつもりはないのだ。

「なぜ私をここに連れてきたの?」

「新世界の住人に値するかの試練」

新世界の。
確かにシナリオでは要所に新世界という単語が出てきたがヒロインの活躍により潰えたのだ。
結局作る側もふわっとした構想しかないし、詳しく考えられていない。
確か、支配者による支配者の大陸だったな。
特定の選んだ人間が中心となって支配国家とするという、これもふわっと設定だ。

「試練って私に?誰かと間違えてんじゃないの?」

しかし、男はしっかり確認したのでそれはないと否定した。
こりゃ、ローの近くに居る人間を無差別に試すつもりなのか?
なんてリスキーなんだろう。

「お断りよ。私はケースの中に飾られるマネキンみたいな生活は好きじゃないのっ」

例え住んでも良いよと言われたとしてもホイホイ住まない。

「どうせこの言葉も忘れるんでしょうけど」

言い損なことだったな思い直して、改めてここの脱出を目指す。

「転移の術、発動」

男を深い眠りにつかせて外へ行こうとした。
だが、弾かれてしまい発動出来ない。
試す場所なだけあって魔法関連では対策されているようである。
仕方無しに頑丈な扉を開ける。
重かったが問題ない。
どうやら男が監視ルームの操作をしなくなったことで開けられるようになった。
なぜ斧で殺されそうになったのかというと実験台であるリーシャが飛ぶ鳥を落とす勢いで解いてしまったのでこちらの関係を疑われ答えを教えたのだと思われてころされてしまうと考えてなかったことにしようとしたとか。
解かせる為に連れてきたのに解いたら解いたで危害を加えるなんて試練の存在拒否だ。
つくづく自分勝手なやつらだなと吐き捨てておく。
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