×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
73
しかし、ハート団は自由を約束されている冒険者なので王家でも勝手に勧誘したり権力を盾にすることは出来ない。
だから、ハート達は当たり前に断ったのだろう。
という、うまが新聞には書かれていた。
その迫ったというぶぶんが不信感を増幅させるには効果的で悪手。
最もやってはいけないことをしてしまった。
リーシャとてハート団に圧力をかけてはダメだと分かっているというのに。
ヒーローに悪役が己の私利私欲の為に悪事に加担するように囁いた。
そう、民衆は考えるのだろう。
絵本の童話みたいに。
明確な悪役は民衆を一つにさせやすい。
こういう世界観なら尚更先入観もあるだろう。
噂でたって貴族を潰せる可能性もある。

「進んじゃった」

時間経過と共にシナリオは解放されていくのは分かっていたけれど、こうも動くと逆に陰謀すらも台本なのだと疑ってしまう。
少しシナリオと違うのはハート団の面々がこちらに好意的だというところ。
いや、リーシャを物語とするならサブイベント扱いだからかもしれない。
新聞で王家の大きな醜態は民衆に不満だけでなく不安を爆発させ今ある王は王座から降りろと言いはじめている。
これもすべて王座を得たいものの策略なのだから末恐ろしい。
少しずつ世代交代もある。
これから起こることは実際にはありえないのだ。
良く良く考えてみて欲しい。
いくら社会人でもファンタジーでソフトでライトなシナリオだったのだから計画も細かいところは分からないし、結構手が抜かれている。
それなのに少しずつ王達は求心力を失っていっている。
世界の軌道力は計り知れない。
穴だらけなのは制作者の一人だからこそ知っている。
その穴を都合良く埋めてまでシナリオ通りに進ませる理由はなんなのだろうか。
それにしてはヒロイン兼主人公の部分はとてつもなく緩い。
現時点でキャシーは物語の渦中に居た筈。
まったくなんの伝もない彼女の現在は弾かれている。
それはもうばっちんと。
ローに嫌われていさえするのだ。
時代が変わるところはトレンドを入れているのに細かいところはおざなり。
まるでこの世界に意思があるように感じる。
そんなわけないか。

「あ、プレゼント」

落ち着いたらプレゼントの存在を思い出す。
部屋へ戻ると中身を確かめる。

――ブシュッ

箱を開けた途端煙幕が顔に発射され気を失うこととなる。
なにかを考える暇などなかった。

次、起きたときは知らぬ部屋に居た。
いや、知らないというには知りすぎている部屋であるが現実で見るのは始めてだった。
見たことがあるにはプログラム。
現代で作っていた謎解きようがあるシナリオ。
たしか、作ったっきり放置で凍結していた。
それに、それは誰も思い出すことはなかったはず。
それが現実として存在していることに己以外の異世界人の影をひしひしと思い知る。

「だれの仕業?」

同郷に対してこんな真似をするなど許せない。
この世界ではお互いの邪魔をしないようにという暗黙が定められていると聞いていた。
それを破るなどと。

「まあいいか。今は」

後から深く考えることにする。
今は謎解きに集中しよう。
数字が並ぶ箱を見て手をつける。
無言で既に答えを得ている頭でカチカチと数字をズラしはめた。
するとなにかが当たった音や機械音が聞こえてなにかが変化したことを知る。
目に見えないが解いていければ扉は開くだろう。
無言タイムで淡々と解き続けていると僅か五分でクリアとなる。
これを見ている監視しているやつも今ごろ汗をかいているに違いない。
prev * 73/79 * next
+bookmark