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小動物を鍋にする為にナイフを手に取ろうとしたが、ローがストップした。
なぜ、なぜ、ワイ?
にっこりにこりんりんと笑顔を浮かべてぐりんと顔を向けると彼はちょっと頬をひきつらせている様子で息を吐く。
どうしたんでしょうね?
まるで見てはいけないものを見たような顔して。

「依頼主に犯人を言わなきゃならねェ」

あ、忘れてた。
いけねーいけねー。
思わず荒ぶってしまったわ。

「分かった。元々はローの依頼なんだからそうしなきゃ困るよね」

ローにドーンと小動物を渡して、彼が魔法で檻を作りそこへ納める。
器用なことするなあ。
そういう魔法が使いたい放題なのも素敵である。
目をハートにするという典型的なことはせぬが心の中ではぴょんぴょこしている。

「行くか」

疲れた風にいうけれど、そもそも取ってと言ったのに取ってくれなかったじゃん。
そこはもっとスマートに動物だけ取り出したりして欲しかったよ。
がっかりなのはこっちであった。
黙々と学園の廊下を進む。
なぜか無言で過ごさねばならなかった。
話しかけても良かったけど、結末が気になって話かけようと考える暇がなかった。
もし、彼らが逃がそうと言うのだったら。

「入るぞ」

ぼんやりしていたからか、ローが声をかけてきて頷く。
あー、なんか気遣い感じられて嬉しいかも。

「おお!トラファルガー氏!」

期待に目を輝かせた学園長がテーブルに座っていた。
まあ呑気なものだ。
こんな事件が起きてクレームの嵐だったろうに。

「もしや、それが?」

犯人らしき人が居ないので今まで見たことがなかったそれに眼を向けた。

「ああ。これが下着泥棒だ」

「そうだったのですか……」

意外だとそれに注目し続けている学園長が悩むように眼を瞑る。
なにに悩んでいるのだろうと考え終わるのを待っていると「巣があるんでしょうな」と特定する。
ローは彼に深くは聞かず小動物を納めた檻を突き出しあとはそっちの問題だと完結させた。
依頼は犯人の特定までなのだ。
冷静になれば人のような動機で下着を漁るわけもない。
その小動物に関しては後ろ髪を引かれるが無責任に私が引き取ります、なんて言えない。
ひっじょーに複雑な心で二人は退室をした。
帰り道には生徒達は授業で居なかったが気分はそんなに変化しなかった。
落ち込んでいるのだと自覚していてもどうにも元気に振る舞えなかった。
そんな中でもローはボスらしく特になにかを言ってくることなく会話もしない。
やはりローはローだなと内心納得。
ギルド前で別れる前に今回の報酬はお前が受けとれと言われた。
え、とびっくり。
そんな、ローが受けたのに。
確かに捕まえたのだから受けとるに足りる。
けど、一割くらいはローが受けとればいいのにと困る。

「おれは稼いでるから別にいらねェよ」

「あ。うん。でも、いらないや」

「なに?」

彼は怪訝な顔でいうが押し付けられる前にバイバイと言って走る。
今回の依頼の結末を思うともらうのは気が引けた。
因みにローはその原因を思い至れず疑問を持って部下に話した時、部下に「そりゃそうなりますって」と呆れられて「こうなったらお詫びとしてなんか贈り物です!」と力説された。


朝、起きてみると宿屋の寝泊まりしている部屋の前にプレゼントが置いてあった。
宛名を見てみると何故かハート団よりと書いてあったのでなんで?となる。
連名?

「今までのお礼とか?それにしても、それでもいきなり過ぎる」

なんの反応も感じなかったので唐突にプレゼントを寄越してくるとは。
いつも通りだったのに。
ポーションのお礼とかかね。
プレゼントの中身を見ようとしたら外から号外号外!と誰かの叫ぶ声がする。
魔法書でさくっと着替えて先に新聞を取ってこよう。
外は新聞を配る人に人が押し寄せていた。
お金を交換しながら怒濤に売れていく。
今にも飛んでいきそうな感じ。
リーシャも人に押されて体の筋肉が悲鳴をあげる。
けど、そうしなければ新聞を取れない。
人の波にのまれながらも必死に買うとそれを広げた。
その内容は顔を青ざめさせるには抜群だった。

――ハート団、王家に首輪をかけられそうになる!

それは今、魔物襲来から信用を落としている王家としてはだめ押しのように響く。
本家のシナリオを円滑になぞっているに過ぎぬ。
王家は今人気爆発中で、王都襲撃の際に大活躍し、今も復興に力を貸していて英雄ロード爆走中のハート団の人気をそのままそっくり欲しい。
ハート団を秘密裏に呼び出し王家直属の冒険者にしようと動く。
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