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学園長達はこちらのしらっとした目に気付き姿勢をぴしりと凍らせる。
それはお前らもそいつを庇うんならお前らもそいつと同類の気持ちなんやろ?という零度。
そうである、HENTAIだと暗に言っているのだ。

「晒させてもらいますけど、問題、当然……ないですよねえ?」

「はいっ!」

「じゃあ、私たちは調査しますのでもしもの時は宜しくお願いします」

ぺこりと笑顔を張り付けて退室する。
その間ローはほとんど見ているだけだった。

「お前……今日は一体どうしたんだ?」

学園長達の生徒を晒したくないという言葉は勿論録音してある。
それを考えているとローに問われて首を傾げる。

「ローは下着盗まれたら気持ち悪くならないの?」

「盗まれたことがないから知らねェ」

「私は下着が取られたことよりも犯人を庇うあの人達にむかついたの」

依頼しておいて隠すことを頼む。

「そうなのか」

ローはピンときていない顔で更衣室へ向かう。
その際にも主にローへ視線が行く生徒達。
普段は見ることのない学園の中なのでとてつもなく聞きたそうにしているが、彼のことだ、絶対に冷たく追い払うだろう。
それくらいは簡単に分かる。
他のキャラクターにも同じことが言えるくらい、皆アクが強い。
強い人ほどそれはそれは我が強い。
他の人と足並みを揃える気が皆無なのも当てはまる。

「ロー。もしかしたら男子更衣室にも出るかもしれないからそっちはやっとくんだよ」

本来手伝う理由もないのに何故かさせられている。

「というか、ローの団に女性居たでしょ。その人はどうして連れて来なかったの?」

普通連れてくるでしょ。
その前に事情を話してこちらの承諾を得て欲しかった。
彼はそれに対して徐に説明をする。
それをまとめるとその人は今出払っていてハート団でも人材が回りすぎて予定が合わなかったらしい。
いやいや、まず依頼なんて受けなければ良かっただけでは?
そう思うが絶対に言いくるめられるだろうな。
ローはなんとなくリーシャを連れていけば良いかという軽い気持ちで受けたのでハートの団員の補欠に関して突っ込まれたので適当にでっち上げたのみ。
嘘を吐くのは簡単に出来るので理由など即思い付けた。
てくてくと行けば景色が同じなので間違えそうになったがやっと着いた。
今は女子が体育の授業で出払っている故に無人だと聞いていた。
見知らぬ女に部屋へ入られる生徒は不憫だが解決するために我慢してもらう。
ローに行ってくるねと断りを入れようとすると短く返事をしてくる。
本当は一人でするのが不安なんだけど。
手を繋いでいてほしいくらいだと冗談でも言っておけば良かったかな。
上手く今回はローをからかえなかったのが悔やまれる。
扉が閉まるとむわりと汗の臭いがした。
どこの世界でもこういう場所の匂いは変わらないかもしれない。
代わりと言ってはなんだがフローラルな香りを魔術書を開いて撒いておく。
これで罪悪感もなくなった。
なぜ罪悪感を抱かなきゃいけないんだと思うだろうけど、やっぱり他人の下着を見ることになるのは多大なストレスになる。
頼んで見せてもらってるわけでもないから。
犯人を捕まえる為にも集中して座り込む。
ハート団の長が覗いていたりするかもしれないので魔法書は出さないでおく。
何事も慎重に運ばねば。
ここまで強くないと思わせてきたので今もそれを続けたい。
か弱さを演出したけど、彼らにとってはどんな風に見えているのか気になる。
気さくに海へ誘ってくれているもん。
暇なのでローとの会話へ至る話題を探す。

――コトン

「!?」

咄嗟に反応したは良いが、犯人ではないかもしれないので耳を澄ませる。
どうやら天井の上。
どういうことだ!
サーチを使いたいけど、出来ない。
まだ我慢して待つ、姿が現れるまで。
そして、暗闇から抜けて現れてのは。
小さな細長い小動物。
内心肩透かし満載だったが、今回の騒動の全容が簡単に想像出来てしまう。
あの小動物は確かテールムウルというフェレットをモチーフにしたこの世界特有の種類。
可愛いは可愛いがなぜ下着?
見ていると一人一人の服入れへ入り吟味したかと思えば、パンツを抜き去る。
はい現行犯。
はい逮捕!
早速捕まえるために動く。

――ザッ

相手の方が先に察知してしまったらしく一瞬で視界から消える。
早すぎて目で終えずキョロキョロとつい探す。
次に小動物の場所を把握した時、それは己の下着という砦を取られかけているとき。

「うぎゃあああ」

慌てて下着がズレないように手をかけるが、泥棒は諦めないらしく引っ張る。
このエロ生物っ。
どういう意図でやってるのかなんて配慮する予定が木っ端微塵になった。
絶対擁護しねえ。

「なにがあった」

ローが数秒足らずに来たがやつは下着の所に居る。

「下着ドロが今私のものを盗もうとしてるっ!取って!早く!」

「取るっつったってどうやってやるんだよ」

ほとほと困りしてた様子の彼は呑気に観戦を決め込んでいる。
取り出すにしても手を突っ込めなんて、やれとは流石に頼みにくい。

「このおおお!」

イライラしはじめて自分でやつをひっつかみそのまま地面へビターン!と叩きつけた。
最初の予定では優しく保護するつもりだったのに残念だ。
いやはや残念だ。
本当に残念だ。

「はぁ!はぁ!はぁ」

誠に誠に残念だ。

「ふぅ……」

さて、今日は良い肉も手に入ったし鍋でもするか。
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