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勘違いされたくないと言った言葉。
本人は男に負担になるので無駄な騒動は起こしたくない故だったのに、ローはローで己を拒絶したのだと勘違いが爆発。
それに気付くことのないゲーム制作者は呑気にふんふんと機嫌良さげにしている。
こうやってわざわざ行く予定のないギルドへ共に向かってやったというのに、恩を仇で返された気分になる。

「むかつく」

己の耳が良いことまでわからなくとも、誰がいつ聞いているかも知らないで言われるのは心外だ。
酒場の奥へと消えていく相手を見おくると当然酒場の男達はローから情報を聞き出したくてとても気になっていますな視線を向けていた。
だが、それを気にすることなく、寧ろ苛つきを増やすだけの煩わしさに周りを無差別に睨む真似はしないものの、近づくなオーラだけは発しながら併設されているギルドの方向へと向かった。

リーシャはローが遠ざかるのを気配で探ってから酒場のトイレへ向かう。
ローにギルドまで送ってもらったのは良いが、別に酒場にも用事はなかった。
単にヒャッハーな人達から逃れたかった故の致し方ない選択。
トイレでローと会ったことへの再認識を済ませるとサクッと出た。
エンカウント発生をさせない為には道路の真ん中を通るしかない。

「用事終わったんなら行くぞ」

声をかけられて振り向くと、もう会わないと思ってた愛しい悪役様。

「え?えっと。なにが?」

別に再度ここで待ち合わせと言ったわけではないから可笑しな展開だ。
首を傾げながら言うとローは呆れたという顔でさも当然といった感じで「おれに付き合ってもらう」と述べる。
初めての事態に目を白黒させているとさっさと酒場をあとにする。
視線の針は敏感に感じていたのでここは着いていった方が良いと判断し慌てた。
足の幅も違うので差が直ぐに空く。
どこへ行くのだと聞けば王都の学園だと言う。
それにギョッとする。
学園、だと!?
ここは無理だと拒否したい。
こんなに焦る理由は勿論ある。
ゲーム内では珍しく、ハート団が関わっていない、いわゆるサブイベントだ。
もうネタバレを言ってしまうと学園でひどい目にあった子がクラスメイトに復讐する為にクラスメイト達を教室に閉じ込めてころしあいをしてもらうといった内容。
そこに閉じ込めれてしまう完全なる部外者がヒロイン。
全く持って無関係なので主犯もヒロインを最後までコロスことは出来ず、キャシーなるヒロインは結局謎と犯人を当てて解決するシナリオだ。
ローに待ち伏せされているとは考えがなかったので嫌だという暇がなかった。
でも、いくら好きな人の言葉でも。

「行きたくないなあ」

さりげなくアピール。

「ついてこいよ」

だめだった。
腹が立ちそうになるが深呼吸する。
好きでもそこには制限が入る好きだ。

「ちょっとロー。なんか強引だよね。あっ、デート?」

「ふざけてる暇があるんなら来い」

おやおや、困った子ですこと。
ちょっと怒るかなと思ったことを投げても打ち返してこないのは少しだけ意外だ。
挑発に乗ってもらえればそそくさと帰れたのに。
作戦は失敗。
引き続き歩かされて向かう。
学園へ着くと入り口の関係者用のタグを首にぶら下げて懐かしのゲーム背景と対面した。
この学園の卒業ではないので懐かしの母校〜なーんて思えるわけもない。
だが、学園編を考えてなかったわけではない。
企画書ではなく、友人との飲み会中にうつらうつらとした中での妄想止まり。
例えば、キャシーはローが学園で何やら良からぬことをしていると感を働かせて、ローは潜入で保険医か臨時の雑務担当に採用されていた。
そこでヒロインとばったり出くわした彼は舌打ち混じりに嫌な感が働く女だと苦々しく思うが彼女は学生として入った転校生なので密かにローの計画を阻止したいと隠密に動く。
そんな感じのシナリオだ。
まぁそんなシナリオは存在させられなかったのである意味悔いたことではあるかも。

「凄い見られてない?」

奇しくも休み時間にきてしまったらしくて子供の視線がサクッと突き刺さる。
ローの顔は箱庭の中でも普通に知られているらしくハート団、トラファルガー・ローと聞こえてくる。
それに伏せてリーシャに対して誰なんだという憶測も聞こえてきたので場違い感をひしひしと感じた。
何故連れてきたのだろう。

「おお、これはこれは。トラファルガー様」

白髭を蓄えた人と眼鏡に前髪をピシッと決めている二人が出迎えてきた。
彼らが自己紹介すると学園長と副長らしい。
益々なんの依頼なのか気になる。

「女性が来てもらえて凄く助かります」

「依頼の件ですが」

場所を移して一つの部屋へ通される。
改めて話は進む。
座るようにも足されてお茶も。

「下着が、無くなった……ですか?」

ことの発端は外の授業で体操服を着替えに戻った女子の下着が全員分綺麗さっぱり消えていたという。
なんでそんな受けそうにない依頼をローは受けたんだ。
思わず白い目で隣を見そうになるけど耐える。
もしかして、なにかあるのかもしれないし。

「王都襲撃に関連した依頼に人員が割かれて、なかなか依頼が受理してもらえなかったので良かったです」

あー、だから学園の偉い人がわざわざ出てきたわけだ。
簡単に解決するだろうと思ったのに他の件で人が来なかった。
そしたら、ローが来たので待ち焦がれていた反動でってことか。

「え、ってつまり。私が女子更衣室で犯人を待ち伏せしなきゃならないの?」

段々話が見えてきて戸惑った。

「この学園のセキュリティを思えば外部の者の犯行ではないと思うのです」

セキュリティって。
この人達が思ってる程万能じゃないでしょ。
シナリオの復讐犯も簡単にクラス丸々一つ己の手の中に入れられたし。
ザルっしょザル。

「は、はあ。ですけど、もし真犯人が分かった場合ありとあらゆる手段をもって全てを周りに晒させてもらいますよ?」

もしそれが知能犯の場合どんな理由があっても許さない。
本当に欲しいのなら金を払ってランジェリーにでも行って買えば良い。
同意なしならば即刻お縄だ。

「いやっ、ですがわが校にそんな生徒が居ると知られれば評判は地に落ちます!」

「言わせていただきますけど。その生徒を審査してこの学園へ入れたのは貴方達ですよね?貴方達がこの学園へ入れたからその人は今下着を懐に溜めて今ごろ悦に浸ってるんですけどね」

「う!そ、れは」

二人とも事態を軽く見すぎだ。
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