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王都襲撃後、ドフラミンゴというキャラクターにより物語が進む。
王族はドフラミンゴの存在により急速に権力を失っていく。
ヒロイン兼主人公が王都の覇権に関してドフラミンゴへ渡らないようにするというのがシナリオの流れなんだが、そのヒロインたるキャシーがあんな感じなんだから無理っぽい。
「えっと。じゃあその人が物資を分けてくれたり兵士を貸してくれたりしたから、復興も住民や商人の流出を防げたってわけか」
「そんな感じ」
「王都の魔物は不幸だけど、その人が来たのは最大の幸運だったんだね」
ワアスゴイナー。
「そそ。んなわけで今もハート団はフル稼働中でな」
「多忙なのか。魔物が来た原因はもう分かったの?」
「おれらは魔物の掃除担当だしな。そういうのは他の奴等がやってっし」
リーシャはそうなんだと詳細を頭に入れ今の情勢を整理していく。
復興してから少し経ちすぎているので乗り遅れた感はあるが、まあポーションとか作っていたので許してくれる筈。
というわけで、ごそごそと懐から作っておいた大量のポーションを一部彼に渡す。
全て渡すと他の店のポーションが値崩れするし、ちょっとずつの方が値段も高く買い取ってもらえるだろうし。
「え?いや、払うって」
彼は財布を手にする。
「んー。じゃあ安くしとくよ。今回は必要でしょ?」
何よりも入り用だろう。
「ん、サンキュ」
男は用事があるんだと言って支払うとギルドから出ていく。
そして、先程から周りの冒険者がハート団の一人と喋っていた己を見ていたのに気付いていたが、知らぬふりをしてギルドの受付へ行く。
ギルドの職員もポーションを買い取るつもりらしく期待に目を強く訴えている。
確かに売りたいのは売りたいのだが、とここまで期待されるような量を売るつもりはない。
先ずは小出しに受付へ出して売りたいのですがと言うとかなり不満そうな顔をされたものの、会計を受ける。
今のポーションの売値を考えるに高めに買ってもらえると踏んでいた。
そして、思っていて通り前よりも高く提示され頷く。
やった、と内心作っといて良かったと歓喜。
まだ持ってるんだろうという視線に晒されるがこれからもポーションの価値が上がると分かっているのに売るわけない。
ふふ、これぞ商売上手ってな。
己のテンションを上げていると支払われたものを受け取りギルドから去る。
これで当分はなにもしなくとも生きていける筈。
たんまり貰ったお金で早速パーっとしよう。
なんに使うのかと言うと食べるものに使う。
お金は使えば使う程回るって言うし。
一人がお金を使っても焼け石に水とはわかっているが、使わないより使った方が良い。
とまあ、建前を言っとき、本音はただ食べたいのと町を歩き回っても不審にならないからだ。
適当に歩いとけばローに会えたりするかもしれない。
そこら辺をぶらつきながら工事の音を奏でる場所があちこち聞こえるなと僅かな希望を感じる。
が、突然横から押されるような衝撃が加わり転けそうになった。
なんだろうか、ローだったりしてと思いながら上を向くとどう見ても柄の悪い見たこともない男達だった。
女一人だからと侮って犯行に及んだな。
今からお金を寄越せとでも言いそうな――。
「命が押し蹴りゃ金目のもん出しな」
あっさり言った。
清々しい程予想を裏切りない。
「ふふ。お断りだよ」
こちらは負ける訳もないので強気で行く。
「じゃあ無理矢理奪わせてもらうぜ」
相手が間入れず襲ってきた。
どこからでも良いように構えていたので初手は楽に避けられる。
相手は避けるとは思ってなかったらしく舌打ち。
アッパーでもやろうかと手を握った。
――ザシュ
が、それを振るう前に鮮血が散る。
攻撃はまだ行使していないので違うところからきたらしい。
きょろりと見るが姿は見えない。
が、その相手が向こうからやってきてくれた。
そのシルエットを見て胸が高鳴った。
「ただでさえ忙しいのに仕事増やしてんじゃねェよクズ共」
モクモクと浮かぶ煙草の煙。
思わず叫びそうになる唇を気力で閉じる。
「くっ、てめェ良くもやりやがったな!」
攻撃を受けた輩は己が今していたの事を棚に上げて吠える。
「ま、待て!こいつもしかして!」
もう一人の男が呻く。
「スモーカーじゃねェの!?」
そうであって欲しくないという願いが込められていた。
が、ときに状況というのは無情である。
「分かってんのなら話は早いな」
「待て!もう二度とやらねェから見逃してくれ!」
うわ、この世でもっとも信用できない台詞だ。
「なに言ってんだてめェ。お前らのせいでおれはやらなきゃいけないことを後回しにしなきゃならなくなったんだぞ。その時間の浪費はお前らで埋め合わせねェと割りに合わん」
――ブワアア
スモーカーと呼ばれた男の周りから視界を奪う程の煙が出てきた。
その様にときめいておく。