×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
67
なにもなりたくなくなった。
五月病が一気に来たみたいだ。
働きたくないでござると言いたくなる。
うだうだ考えてはじたばたしたくなった。
なにもしないとやはり考えることしかなくなり、どうにもこうにも動けない。
今までロー達と懇意にしてきたけれど、それはまやかしと薄々分かっていたではないか。
今になって軽薄に対応するのも虫が良すぎると分かっている。
彼らだって突然こちらから冷たい態度を見せたらどう感じるかなんて考えなくとも想像出来た。
それで縁が切れてもきっと彼らの日々は変わらないのだろう。
その方が良い。
だって、本当は己の存在は彼らの中では存在しなかったのだ。
しかもヒロインだった人までまだろくに関わってないのだから。
相当な番狂わせだ。
一心不乱に薬などを製作しているとどんどん楽しくなっていき気付けば三日も作っていて過ぎていた。
自分はやはりシリアスな思考は長く考えられないようである。
他の人担当だ。

「まだまだいけるな」

こちらはお気楽な人生を楽しもうとしている組なのだ。
ロー達と関わっている時点で道を外れているだろうと突っ込みが入ったとしてもお気楽であると言いたい。
そこにシリアスはなしにする。
ただ、自分の推しを応援するという極自然な感情。
キッドだってドフラミンゴだって熱烈なファンがついているのだ。
ローにそれが同じくへばりついているというだけ。
それからまた何日もかけて薬をありったけ量産していく。
ロー達のことだって殆ど忘れかけていたとき、耳にふと音が入ってきた。
鳥の鳴く音だった。
どうしてその時耳に入ってきたのかといえば、単に集中力が失われただけだ。
ハッと気付いた時には手先がカピカピの薬草まみれだった。
一体いつ寝たんだと自分でも不思議だ。
それに、いつ食べたりしたんだろう。
もしや無意識で行動していたのか。
そうならばそれは僭越である。
不眠不休で研究などに勤しむ同類を見たことがあって、点滴を腕にぶっ刺していたのを知っていた。
ああはなりたくないと戦いたこともある。

「あー、もう降りよ」

町へ出戻ることにした。
流石に復興をし始めていると願いたい。
山を下り町への入り口へ行くと出ていくための方向からの人だかりよりも中への方が人が多い。
既に出ていくと決めた人は出ていったのかもしれないな。
あんなにボロボロになった町では住めない人も出始めていてもおかしくない。
明日生きてゆけるか分からないような事態に発展しているかも。
それにしてはやけに賑わっている気がする。
怪訝に感じつつも門番に身分のものを渡す。
門番の制服もなんだか違う気がする。
でも、他にもわけが分からないところがあり、こちらから行く人の顔がどこか嬉しそうなのだ。
普通、復興の最中にしても何かを期待している顔なんてするかね。
異変を肌に感じるが、中に入ればギルドでなにかしら情報を得られるだろう。
門番に身分証を返してもらいギルドへ道を行く。
途中、出店や半壊した建物を見かけた。
まだあのときの戦いの爪痕は深く残っている。
しかし、争いのあったあと特有の民間人の暗い顔が見当たらないことが引っ掛かる。

「もしかして例の真の黒幕が?」

その可能性が高い。
いままで真の黒幕としか言わなかったし具体的な名前を言わなかった理由についてはもしかしたらシナリオを食い破って違う人でも出てくる可能性があったからだ。
もし違ってたらすごく恥ずかしいやつと思われてしまう。
そのまま町の様子を眺めながら冒険者ギルドへむかった。
が、視界のすみにダーク色のなにかが見えたような。
耳が尖った黒い肌、たわわな胸。
よし、見なかったことにしよう。
ローが目を覚まさない呪いにかけられた時に連れられた記憶がバシバシ刺激されてるけども。
目を最大に逸らし、ギルドへ到着すると特にごったがえしているわけでもなかった。
普通はまだ混乱していても可笑しくはないはずだ。
やはり、例の黒幕の存在が過る。
これからの行動を慎重に考えなきゃな。
入り口を過ぎて中へ入った。

「あっ……おい、リーシャ!」

名前を叫ばれて他の冒険者達の視線を浴びたどこかの誰かを見る。

「あ!」

ハート団、団員その15だった。
決して名前を忘れたとかではない。
ほら、色々と面倒だし。

「こんなとこで奇遇だ――」

「待ってたんだっつの」

言葉を遮られて強く発される。
待ってたらしい。
なんで?

「団長がお前は吹き飛ばされて怪我してどっかに連れてかれたとか言うから」

確かに全てその通りだ。
字面だけ見るとなかなかに安否を気にしてしまうな。
それはごめんねと特殊に謝る。
ここで反論しても心配したのにと怒ってしまうだろうし、その気持ちはとても嬉しかった。
それはそれとして、その後はどうなったのか気になっていたので目の前の彼から情報を集めることにする。

「あんなことがあったのに随分と活気付いてるよね?なにかあったの?」

さらっと簡潔に聞けば町が壊滅状態になった頃、ロー達が魔物を倒して人々を救出している最中、ドフラミゴと名乗る一国の王様が援軍を率いて助けに来たのだと言う。
なんでもお忍びできたので兵士の数は少なかったが、それでも先鋭達だったらしくあっというまに魔物を駆逐したと。
へー、なんて偶然なんだロウネー。
というか、今まで不確定だったから敢えて考えないように、原作に気を取られて穴に填まらぬようにしていたのにまんまと原作に沿ってしまった。
prev * 67/79 * next
+bookmark