04
数分後、ん、と掠れた声が聞こえてきて目を覚ましたのだと嬉しくなる。
上半身を上げると周りを見、最後にリーシャを見てきた。
「目覚めた?」
「ここは、お前は」
うん、やっぱり。
ハート団としてもメロウとしても、どこか作風の威圧感を感じ取れない。
青いなって感じか?
若いから貫禄なぞまだないと言うわけか。
若いといっても作品からそう離れていないとは思う。
「ここはどこか知らないけど、私は川から流れてきた君を引っ張っただけだよ」
別に恩を着せるつもりはない。
「あいつらは……くそ」
小さく呟く男に首を傾げ、パッと笑顔を咲かす。
「あ、そーだ。カエル焼けたんでどうぞ」
「は?」
「どうぞ」
「は?いや」
頬をひきつらせていく男にぐぐ、と内心笑みをかみころす。
やはりいじりがいがあるな。
「っていうのは嘘です」
カエルはリーシャも食わないですから。
ひくつく顔が更に強張る。
初対面だから軽く解す為のストレッチユーモアなんだが。
「これは干し肉で」
カエルの肉というのは冗談の域。
今度こそ渡す。
全然受けとる気配もないので無理やり口に当てた。
「!」
ローは何か言いたげに見てくるが、若さゆえの押切に負けた。
若いっていじりやすいや。
内心にやついた。
今、身近にキャラクターとしての彼が現実に存在するというのは不思議な感覚。
「あ、服はここだよ」
枝を突き刺した上にかけた。
ちょっと解れている。
原因は枝に引っ掻けてしまった為だろうが、気付くわけがないとたかをくくる。
だってこの服高そうだし、払えなさげ。
乾かす為に慣れない事をしただけだ。
ま、気にしないでしょ。
「ここがどこか知らないと言ったか」
漸く一息の落ち着きを取り戻したのかこちらを警戒している瞳をさせながら尋ねられる。
「私も魚に食われて運ばれたから」
「は」
また固まった。
予想外に弱いのは健在のようだ。
「魚に。それで落ちて川で洗ってたの」
楽しい。
顔芸の幅が広い。
流石悪の花形。
いや、ハート団のまとめやくかな。
「そうそう。君の名は何?」
「お前から名乗れ」
「んー、あとでのお楽しみ」
「意味が分からねェ」
ぶさけてんのか、と副音声が聞こえてくる。
「え?冗談」
また絶句された。
ハート団絶句する人が多いな。
「で、名前は」
ふんふん、と頷いて足す。
ぶさけんじゃないと目が言うが本気だ。
「で?」
「ロー」
すっごい渋々言った。
「ろぉ?ろー?」
「ロー」
「うん。ロー。私の事はリーシャと呼んで」
「呼ばねェ」
「ふうん。ま、いいけど」
からかいすぎて機嫌損ねちゃった。
「あ、丁度今カエル肉焼けたよ」
「は」
「ユーモアジョーク」
「てめえ!」
キィ、と怒る。
どうどう、落ち着け。
怒らせたのを棚に上げ宥めてくる女にローは奥歯を噛み締める。
「そういえば」
そういえば!?だ!?と憤る男。
「川に流れてきたのはなんで?」
「なんでも良いだろ」
ふん、と鼻でツンとそっぽを向く。
そんなことしても可愛いだけだよ。
「誰か探している人は居るの?」
「念話でもう知らせた」
念話っていうのは電話が脳で出来る魔法だ。
「念話!私もそういうのしてみたい。念話って頭痛くならないの?」
「最初は慣れないが」
と、話している途中でハッとしてやめるロー。
今きっと会話しちゃったよくそ、とか思ってそう。
やはりロー担当だったから大体思考が読める。
そのおかげて弄れるんだけどね。
やば、楽しすぎ。