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- ナノ -
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事件の夜、一泊する予定ではなかったが、キッド達と会ったので盛り上がって酒盛りするのだと急遽予定変更となった。
一泊するようで、リーシャの部屋も取ってくれた。
仲良くか、別々で酒盛りするのかは知らないが、嬉しそうに向かっていくのを見送ってから一人で浜辺へ向かっていく。
潮風に撫でられながらも考えるのはこれからのシナリオだ。
今までの事件はこれからの大きな事件の準備であり、布石。
大きな事件、陰謀と言った方が正確だろうか。
このままあの町に居ない方が良い。
早めに去らなければ大変なことになると分かっていても、やはりロー達の近くに居たいからこそ離れられないでいる。
もしかしたら、死んでしまうかもしれないのに、呑気に執着していては手遅れになるだろう。
自分に呆れてしまう。
渇いた笑みを浮かべていると直ぐ傍で砂の擦れる音がしてパッと向く。

「あれ、皆と飲まないの?」

ハートの団員達に囲まれて連れていかれていった男。
今頃めんこい女性を侍らせて楽しんでいるかと思っていたのに。
こんなぽつんとした空間にわざわざ来るなんて。

「結構飲まされた」

「あー、皆まだローが起きたことを噛み締めてるんだよきっと」

目覚めるまでかなり時間がかかったし、いつ様態が変化するか気が気でなかったのだ。
多目に見てあげなよと励ます。
ローは無言で隣に座る。
デレ期でもやってきたか?と思ってしまう行動に目を丸くする。

「今日はありがとね」

「大したことじゃねェ」

ローにとっては答えが分かっていた問題を解くようなものだったに違いない。
それに、実力もある。
あの半魚が手も足も出なかった。

「足、もう痛くないよ」

怪我をした箇所も治してもらえた。
海には治癒士も常駐していて、慣れた手付きでしてもらえて良かった。
本当は魔法の本で治せるが、治せたら不審しかならないので使えない。
海の音が聞こえる中、やはりいつもの通り、ローの声はしないのでこちらしか話さない。
そういうのにも慣れたな。

「風、冷たいね」

ぽつりと言えばローの手先が淡く光り、唐突に体が暖かくなった。
さりげなさ過ぎて、驚いたけど嬉しさに頬を緩めた。



――数日後。

祭りに行こう行こうと言い合って漸く叶った今日。
今回の祭りの理由はナントカとかいう王族の人がパレードをするのでお祭り騒ぎらしい。
うーん、祭りは良いがパレードには興味がないのでうろ覚えだ。
ローの居るであろう待ち合わせの場所に行くと一人だけだった。
他の人達はと聞くと既に各自散らばって祭りを楽しんでいるとのこと。
皆待ちきれないのだな。
クスクスと耐えれず笑えばローは至極つまらなさそうに行くぞと声をかけてくる。
周りを見ると人々が賑わい活気があって、ぽんやりと空を見上げた。
一瞬、脳裏にノイズが走る。

――グラグラッ

「あっ」

少し地面が揺れ、ローの背中に倒れる。
ごめんと謝り体勢を立て直すと彼は手を掴んでくるので、びっくりした。
しかし、倒れたのだから見かねたのだろう。
少し歩くとパレードが始まったらしく向こうから歓声がドッと聞こえた。

「見に行かなくて良いの?」

「反吐が出る」

背筋が殺気で凍る。
これ程些末なことだと言いそうな空気を作り出す相手に続きの話題を出すことなど無神経なのとは出来ない。
民間人であり人間なのだから、何かしらの感情があって当然なのだ。

「そっか、あっち行こ」

気にしないよとローを引っ張って行こうとする。
その時、また地面が揺れた。

――ゴゴゴゴ

何かが悲鳴を上げているような音と共にどんどん激しく揺れる。
それは唐突に起こったこと。
当然、町はパニックに陥りパレードなど見ている余裕はなくなった。
ごった返していたのが何よりも最悪で、人は押し合い悲鳴を上げながら我先にと逃れようと動く。
中にはパレードの真ん中に守られている王族や護衛騎士達に助けてくれと乞う人も居て、護衛達は王族を守ろうと必死に体で押し返す。
しかし、数が圧倒的に多すぎてそれも出来ていない。
パレードの乗り物の中に入ろうとしている人達も居て、場は最悪な展開を迎えようとしていた。
高い建物が突然欠片にしても落ちてきたり、そんなこともあった。
逃げ惑う中、ローはリーシャの手を取り走っていた。
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