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- ナノ -
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ヨルムが居るということはキッド達も居るということ。
って思っていると砂煙が向こうからやってきた。
そして、赤いそれが見えると瞬時に理解し、咄嗟にスルンと横に回避。
その男は止まることなく砂に突っ込む形で止まる。
避けてなかったら人身事故だぞこれ。
冷や汗をかきながら彼女が嬉しそうにはしゃぐ声が聞こえて、この恋愛脳がと憎々しく思う。
今ぶつかるところだったのを見ていなかったのかお前。
不都合なところを指摘しないなんて薄情め。

「ヨルム!勝手に行くんじゃねェ」

キッドが怒鳴る。
突っ込んできたのはキッドだった。
後からやってくる面子も傭兵団の諸君。
分かりきっていたけれど、特別冊子が元とはいえ豪華な人数になってきた。
でも、果たして豪華なバージョンの冊子がこれで終わるのだろうか。
キッドとヨルムが言い合うのをぼんやり観察していると水面から出てくる面々が見えて、やっと出てきたかとわくわくする。
しかし、今は間が悪い。
ほら、ローがさっきからキッド達を見ているし、キッドだって彼女と言い合いながらも意識はローに向いている。
わかる理由はキッドの口元が好戦的に歪んでいるから。
敵意と言い換えても差し支えないようなものだ。
ギラギラしていても、彼女との言い合いはやめないのだからこいつらは最早両思いなのではないかと思ってしまう。
羨ましい単純に。
キッドのホの字を見ようと隅々まで舐めるように見続けてみた。

――ドンッ

「ぎあっ」

突然背中に衝撃が走り砂へ体がぶつかる。
誰だこんなことをしたのはと急いで目を向けると意外なのとに、後ろに居たのはローだった。
うそ、もしかして嫉妬?

「おいおい、トラファルガー、そりゃねェ」

キッドの呆れた声が聞こえた。
うん、もっと言ってやって。
リーシャとて、違うやり方だろうと突っ込みたくて仕方ない。
腕を取って胸元に引き寄せるとか、目元を隠してみるとか、乙女思考なのは分かっているが、後ろから押すよりはずっとマシ。
砂だらけになったので一旦海へ入ることにする。
ハート団はすでに上がり終えているのでもう入っても構わぬ筈。
それにしてもひどいやり方だ。
いくらキャラクター愛に溢れている己でもちょっぴり落ち込む。
その頃、ローは仲間達から非難の視線を浴びていた。

「団長、あれはないっす」

「あいつはおれらを支えてくれた恩人なんだが」

ローは煩わしいと言わんばかりにフン、と一蹴した。
とぼとぼと浜に戻りヨルムとキッドのところへ向かう。
ローのところに一目散に行かないのはまた押されるのはかなわないという逃避感から。
海に泳ぎにきたのにまだ全然満足に出来ていないのを思いだし、キッド達とふれ合ったらやろうと心に決める。
蠢く黒い計画は気をつけていればなんとか大丈夫だろうと気持ちを整えた。
すたすたと歩いていくと海の家の前で冷たいお菓子を頬張っているのが見えて、あ、美味しそうだと感じ、混ぜてもらおうと駆け寄る。
が、その最中、ギュッと腕を掴む感覚。
いや、掴まれた感覚。
ナンパ目的の無言かと振り返る。

「えっ、どうしたの?」

またもやハート団の総括だった。
総督の方が正しいのかな。
どっちにしろ意味も変わらないか。
腕を掴んだ男は話さない状態でこちらを睨みつけるように見つめる。
いつもより更に無口になってるな。
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