×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
03
だが、まだ終わっていない。

「ふっふっふ!私に付着物が無くなるまですり付けてやるわぁ!」

どーんと走れば蜘蛛の子の様に散る。
おいおい、甘い甘い。
この一年一般人の範囲内で鍛えた体は彼らに追い付けないのだ。

――ゼェゼェハァハァ

「ま、ま、待って。置いてかないで」

ここどこか知らないもん。
置いてかれたらどこへ行けば良いんだよう。

「追いかけといて弱っ!」

突っ込み属性多いな。

「ほんと待って。せめて町の場所を教えて」

ヨタヨタヨタヨタ、よろけて追い縋る。
いや、その前に泉でこのヌメッを取る事を優先するべきか。

「それか、私をおぶってって」

「お前ベトベトだろ」

「え、役得じゃない?」

「得ねェわ!?」

なぬ、ヌメヌメな女が得じゃない、だと。

「人生損してるよ君ら」

あやや、遂に皆黙りこくってしまった。

――キョロキョロ

「うん?」

見回してみたが、例のキャラクターが見当たらない。
別の場所で仕事をしているのか、それともメロウとして暗躍しているか。

「ねぇねぇ。お願い!誰か道案内して。あの魚に食べられてここまで来たんだよ」

手を合わせて神妙に頼む。
もうぬめりをすり付けた後だけど。
でも、そんなの男の間柄では良くある遊びでしょ。

「どーする」

「んーんー」

皆顔を付き合わして相談している。

「って居ねェ!」

チラッと見るつもりで後ろを向いた男達の視線の先には魚の粘液にまみれた女の姿が消えていた。



泉を探していたらあのハート団とはぐれてしまった。
こういうところを気を付けなきゃ。
毎回思うが先に目的が先行してしまうと後先が見えにくくなる。
現に今も頼みの綱を見失ってしまった。
少し、ほんの少し嬉しかったのだが。
ハート団という知っている人達に会えて。
しかし、今はゲームのどの時期なのだろう。
主人公は探偵というか、メロウを捕まえたいという目的を持っている設定だ。
でも、シナリオでメロウが捕まる事はない。
なぜならメロウはイベントで使いどころがめちゃくちゃ良く、捕まえられると作る側に多大な不都合もある。
色んな陰謀に関わっているし、正に悪役の花形。
運営側もユーザーにも人気のキャラクターなのだから、ない。
ま、過ごしてればいずれ会えるだろう。

「川だけど、この際」

流れていたのは川だ。
服を来たまま川に入る。
ばしゃばしゃと水音を立てていると川の向こう側から何か黒いものが流れてきた。

「て、人じゃん」

今時桃が流れてきて欲しいとは言わないが。
人はちょっとな人は。
流れてくる人を流し素麺の如く掴む。

「ん」

流石に水分も含んでいるから重い。
よっ、と声を出して引き上げると疑問符が沸き起こる。
あれ、この顔。
ゲーム期間よりも若々しいこの人は。
キャラクターの一人だ。
しかも、ハート団とメロウのリーダーだった。
でも若いな。
シナリオを手掛けたので過去編も勿論書いたし知っているが、面影のある顔を覗き込む。
どうして彼、トラファルガー・ローが川に流れていたのだろう。
本当にそうめんにされたのかな。

「おーい!」

青年と大人の中間の男に声をかける。
しかし、目を覚まさない。
こういう時は人工呼吸なのだろうが、自分の知る男を汚すようで躊躇われる。
それに絵師さんがかっこよく書き過ぎてレベルが高いのだ。
取り合えずここは助けたが放置していくか、彼が目を覚ますのを待って一緒に町へ付いていくか。
ヌメヌメが取れたので魔法の本を使い炎系の魔法を服を乾かす為に使用。
ボォボォと薪の火の大きさで出現しローと己の服を乾かしていく。
いつ起きるか分からないので座る。
やっぱり一目でも話したいと思うのがシナリオを担当した故の本心。