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私はもっと泳ぎたいのだとか、今来たばかりなのになんの為に来たのか分からないとありきたりだが、正当性のある苦言。
うん、我ながら良く言えてる。
びっくりなくらいな正論を述べていると、厳選してないのに、何故かぴったりか声が鼓膜を震わせる。

「おれの言う事、聞けねェってか」

気だるげで、かつ、抗えぬようなボイスだ。
ドラマCDを作る前だったのが悔やまれる。
いや、今からでもローに頼んで作ったって良いのではないのか。
不埒な思考がチラチラしたものの、なんとか口を動かす。

「彼らは!?彼らは良いのっ」

団員達を指差して指摘する。
依怙贔屓と世間では言うのでは。

「あいつらは強いだろ」

「身内贔屓だー」

「ごちゃごちゃ言ってねェで向こう行け」

彼に背中を小突かれた。
痛いような微妙なそれに仕方ないなという風を装い海の家へ向かう。
これで何かあったらローが事前に知ってたんじゃないかとリーシャにバレる可能性を考えていないのだろうか。

「なんて甘く」

最近気が緩んでいるんじゃないのか。
海に誘うことからして、そんな気がするな。
計画を立てている癖に障害になりそうな人間を連れてくるなんて。
そこまでしても完璧だとたかを括っているのか。

「確かにローほど社会的な地位があるなら納得だね」

信用出きるのだと思わせているんだから万が一そこに居合わせてもなんとでも言いわけ出来る。
そして、それを周りは完全に信じる。
それが成り立つからこそここに誘えたのかも。
海の家でアイスを頼んでポリポリと食べた。
うむ、ひんやりしていて美味。
それにしてもこの炎天下の中、まだハート団は海から上がってこず。
いつまで潜水してるんだろう。
今ごろ解体作業でもしてるんだろうか。
それとも、何かしら裏のありそうなイベントの下準備とか。
ありえるな。
解体するのも時間がかかりそうだし、それとも、秘密の話し合いでもしてそう。
今回は己と言うイレギュラーな人間が混ざっているから目につかないようにするのに、気を尖らせていそうだ。
でも、最初から誘わなきゃ良いのにとついつい思ってしまう。
そうすれば、別に尖らせなくても良いとなる。
それとも、自分のような一般人の目撃者が必要なのか。
様々な思惑。
それらを敏感に感じ取ってしまわないようなやつなら連れてきても平気だし。
でも、人選に関して失敗しているんだよなあ。
気付かないどころか、裏を全て知っている。
それを彼らは知らないからこの奇妙な関係をやっていけている。
何かを見てしまえば、惚ければ済む。
例えば、ローが変装して現れたあのとき。
アイスの棒を最後まで食べてからゴミとして捨てる。
そろそろ皆、放置させるのも限界が来ている。

「リーシャ〜」

――ドド

幻聴かなにかが聞こえた。

――ドドド

「おーいっ」

砂がめり込む音。

――ドドド!

横側から砂煙が見え、猛烈な勢いでこちらに向かってくる何か。
声を発せられるそれ。

――ドドドッ

――ズザザザァ!

目前に来たそれは砂も一緒に連れてきて急ブレーキをかけた。

「あんたもここにきてたんっすね!流石は同士よ」

ヨルム、水着バージョンだった。
オリジナルキャラのくせにでばりす――ごぼんごほん!
おっといけない、こんなことを思うのもひとえにオリジナルなやつを好まない人達がいる――もうやめておこう。
メタイってやつになるし。

「ヨルム?どうしてここに?」

知らないのか、と怪訝になる彼女の顔。
説明によるとプイッターキャンペーンとコミコミコミコミの特別シナリオの冊子にあったシナリオが現在起こるかもしれないのだと聞かされ、そこまでは流石に覚えてないなと乾いた笑みが浮かんだ。
リヴァイアサンもその過程だった。
もう知らないイベントがあっても対応出来ないぞ。
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