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- ナノ -
53
リーシャはヨルムに会えた二回目を思い出していた。
勿論、そのことはしっかりと覚えている。
重要な情報をくれるかもしれないという期待もあったから。
取り敢えずキッドのところでこれからも働くのだということは聞いた。
キッドにヨルムのためだと入団するように迫られて追いかけられたのだと言うと凄く悶えていた。
おまえは恋に盲目か。
鋭く指摘してやると、リーシャこそとローに捕らわれた事を言われる。
ついに捕まったな、物理的にとニヤニヤ顔があって鼻パンチしてやりたかった。
また飲みに行こうと話して別れた。
お互い、元の世界のことには触れなかった。
いずれ触れるのかもしれないが、今ではないと察している。
どちらも、まだはっきり自分の理不尽さを己で突きつけるには日が浅い。

――ヌメェ

背中にひんやりとした感覚が流れる。
あ、日焼けのオイル持ってきてくれたんだ。

「まんべんなくね、まんべんなく」

「指図するな」

指が背中を行き交う。
あー、今あの、ローに塗られてるんだな。
不思議だな。
二次元に日焼け止めを塗られるなんて本来実現しない、決定事項だったのに。

「ありがとう」

全て終えるとゆったり立ち上がる。

「泳いでくる」

ついに泳げる、と走り出そうとする。

「おい」

呼び掛けられて首だけにしておく。

「ここも塗れてねェ」

彼はお尻と太ももの間に手を押し付ける。

「!」

求めていたものとは違ったところを触れられて、恥ずかしくなる。
背中を塗られるのはなんら平気なのに。
というか、ローこそ嫌だとか思わないのか。
赤面にもならないが、目が潤む。
彼はこちらを塗り終わったと伝えるためか目をあわせた。
その秒後、みるみるうちに目が更に大きく開かれる。

「い、ってくる」

顔をそれ以上見られるのはムリだったのでフイッと背けて海へ走る。
海に入ればきっとこの気持ちも落ち着く。



海に入って凡そ15分。
ただただひたすらにぷかぷか浮いていた。
遠目で彼らを確認すると各団員達は普通にそれぞれを過ごしている。
何か企みがあっての海ならばと少し警戒したが、何事もなく安堵。
これで何かあれば彼らの関与は必須。
人間不信も止まらぬだろう。

「あ、ちょっと流され過ぎちゃったかな」

ぼんやりしていたからか、陸が離れていて、よっこらと泳ぐ。
ふと、向こう側の地平線も気になるので見てみる。

「……あっ」

微かに数人蠢く何か。
こんなシナリオ、あったかな。
まぁ、今は陸へ行くことにしよう。

――バシャッ

クロールで泳ぎ楽しい気持ちで地面に上がる。
焼きそばが食べたいなと屋台を見に行く。
海の家の方が今は正しいが。

「おい」

歩き出そうとするとローに呼び止められた。

「またモンスターが出ると厄介だ。あまり遠くへ行くな。お前なんて餌になるのが落ちだろ」

「え?まぁそうだけど」

普通ならツンデレが心配してくれたと受けとるべきなんだけど、今日は裏を読んでしまう。
自分には、事件が起こるから動くなと言われているように聞こえている。
さっきの蠢く何かも気になる。
それをあわせれば、ローの言葉を素直に受け取れない。
素直に分かったと抵抗せずあっさり同意しとく。
と、ならない。
大人がやるには違和感を持つので多少会話が成立するのを遅らせる。
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