50
はい、次の時には恋人になってしましたー、ぱちぱちぱちー、とはならない。
キスされて数日経つものの、あれに関してローからなーんにも言われなければ触れられることもない。
なんだったんだろうかあれ。
頭打ったから幻覚でも見ちゃったかねえ?
あの時、最悪な気分だとか言ってたし、傍に居たからその場で欲求ぶつけちゃったんだ的なやつなのかな。
でも、ローは真面目だからそういうのはしないと思うのですけどね。
疑問が残るものの、気にしててもあれなので海に行くとなっている日に元気良く宿を飛び出した。
「おーい、待たせたねー」
結構最後らへんだった。
お前達そんなに楽しみなのか。
めっちゃ早すぎ、集合時間よりも一時間早いぞ。
まだローだって来てないのに。
「部下たるもの、上司よりも早く来てなきゃな」
揚々と言うけど限度があると思う。
「あ、団長の鬼形相の真意お前知ってる?」
シャチが浮き輪をぺたんこ状態に折りながら聞いてくる。
会ってないから分かんない。
「えっとね。私部下じゃないからどうでも良い」
「団長に欠片でも興味持てよっ。お前が運ばれてきてからなんだからよー」
おいおい、と窘められるものの、本当に知らないので。
それよりもローにキスされたんだが、どう思う?なんて聞くのもなんか無理だしな。
「そういう月間もあるよ。ローも人間だし。多分」
「おれらの団長は人外だったのかっ」
違う団員が突っ込む。
「鬼ってシャチから言ったんじゃーん」
「形相なの!それと、団長は確かに化け物なカリスマだ」
「リトマス紙なのは分かったから」
「リトマス紙?」
「アルカリ性の電池の方が良いなら良いけど」
「アルカリ性?」
話が噛み合わない中、一番最後にローが現れた。
「遅いよ。最後なんてだらけてるー」
ローに言うと無視された。
うわ、ショック。
これならまだ鬼の形相の方が見てられる。
別に無視されることは希にあるから今に始まったことでもない。
慣れてるし。
「わー、無視されたー。慰めてーっ」
ペンギンのところへ向かう。
――ぴく
ローが僅かにみじろいだのをペンギンは目撃してしまう。
「よしよし。それじゃあ出発するぞ」
ペンギンは適当に慰めてそれとなく離れると皆を誘導した。
どうした、なんだ皆してとリーシャはムウッとなった。
あんなにローが眠っている間メンタルケアしてあげのにぃ。
恩知らずめ。
ちょっとむくれたままついていく。
どうやってリゾート地に行くのだろうと思っていると彼らは一まとめになって団子状態に集まる。
何をしているのだろうと見ているとシャチが今気付いた様子でこちらを見た。
「お、そうだった。お前もこっちこい。今から大規模な移動する魔法を展開させるから」
「ふぅん」
ローだから出来るんだろうな、それ。
呆けたふりをして周りをキョロキョロする。
ここでこうでもしないと不自然だから。
初めて体験する風にしなきゃ。
大型の移動魔法なんて滅多に体験出来るもんじゃない。
「動くなよ」
短くリーダーが告げて魔方陣がブワッと光る。
大量の魔力が周りを囲むのが見えて、流石ラスボス【裏方】だなぁって思う。
ラスボス【真】はまた違った方面でヤバイのだから、これくらい朝飯前なのだろうな。