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- ナノ -
46
ヨルムこと同郷とは話し込んでいき、夜になる前に別れた。
数日はこの町に居るらしい。
それにしても、とベッドに沈みこむ。
かつての仲間と出会うとは。
色んな事が思い出される。
あのとき、あの場所、匂い、雰囲気まで。
懐かしいな。
戻りたい衝動に駆られる。
でも帰れないんだろうな。
少しだけ悲しくなるがそれも直ぐに薄れ行く。
考えても考えても、事態が動くことはないと分かりきっていた。
考えを改め、今日の事を整理し深く息を吸った。
同じ経験をした人が居るというのは考えてなかったが、素知らぬ人ではなかったのが希望をかざす。
キッドのところに居ると言っていたが、傭兵団という仕事をしていることになる。
大丈夫なのだろうかと不安になる。
ただのゲーム製作者の一人だったのにいきなりハードなものになるとは覚悟が居るだろう。
そんなにもキッドの傍に行きたかったのだろうか。
リーシャはローの傍に居たいが、組織に入ろうとは思わなかった。
いくら好きでも自分の倫理観がそれを拒んだ。
傭兵と犯罪組織は似ているが役割が違うし、やはり、無理だ。
キッドが好きでも入らなかったと思う。
だからヨルムは凄い。
でも、出来るのなら安全圏で観戦して欲しいな。
一緒にポップコーンでもつまみながら。
でも、同じ世界に居ると知った今、安堵する自分も居る。
一人じゃないんだって。
知ってる存在がハート団達だけだったのもあり、追いかけた理由でもある。
ヨルムがこの世界に居るのならロー達を追いかける必要もないのでは、とちらりと考えてしまう。
いや、しかし、とやはり悩む。
ヨルムはヨルムの人生だ。
そこに干渉するのもなんだかなぁ、と思う。
キャラクターより前の友達の方が重要なのは変わらないが、一度ヨルムに近状を詳しく聞いてみようかな。

――次の日

ヨルムはキッドの傭兵団として働いていると言っていたから会うのは簡単だ。
今から会いに行こうと町を散策も兼ねて進む。

――カッ

靴音がやや後ろで聞こえてきた。
なんなのだろうと後ろを見ると何もなく、ただ人が忙しなく歩いているだけ。
聞こえただけだったので何も思わず前を見る。
ドン、とローが一人仁王立ちしていた。
ヨロッとなりたたらを踏む。

「えっ。あ、おはよう?」

こんなに堂々と前に来る人ではなかったような。
そんな気分なんだろうと思い普通に挨拶から入る。

「……どこへ行く」

「え?どこって……友達に会いに?」

疑問系なのはローが聞いてくる意味が分からないからだ。
どうしてそんなことを聞くのだろうか。
それが気になって気が散る。

「友達?まさか昨日の奴か?」

「えっとー。ローはそのこと聞きに来たの?」

心の中で小さい己が緊急会議し始める。
おや?
みたいな。
進化するのかなあ。
なんて、ね。
でも、確実にリーシャの事が気になっているのはなんとなーく分かる。
今ローは自身の予定について気になるから待ち伏せしていたのではなかろうか。
待ち伏せしないとこんなタイミング良く現れないと思うんだ。

「良いから言え」

言わないって選択肢もあるのに命令なのがローらしい。

「んー、言おうかな、どうしよっかな」

「は?おい」

くるりとローを大きく迂回して横を通る。
呼び止められるものの、駆け引きってこういうのを言うんだろうか。
なんだか少し楽しい。
このまま追いかけてくれりゃあ良いさ。
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