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おー、どんどん熱くなってきた。
これは間近で観戦したい。
急いでロー達が遠目に見えるところへ。
高ぶっているのを悟られぬように足早に向かう。
るんるんな気持ちでローを見ていると離れている筈なのに目が合ったような。
そんなわけないか。
だってただのハートと関わりのある1人の女に関してわざわざ見るわけもない。
見るのなら今混乱に陥っている町全体だろう。でも、見てくれたのなら嬉しい。
わくわくしながらローを目で追っていると戦闘が最終段階に行く。
そろそろ決着を付けないと警備やギルドから人が来て二人を止めるか、見守るしか出来ないか。

――ガィン

金属がぶつかり、響く。
その度にローが怪我をしないかハラハラする。
しかし、ローはボスなので早々負けはしない。
安心しているところもあるけど。

「おらァ」

キッドが剣を振り上げローが避けた。

「そこまでだァ!」

――キィィン

声が町中を響かせ煩すぎて耳を塞ぐ。
しかし、既に声は耳を通過しており無駄である。
今だ煩すぎて目が潤んでくる。

「このクソガキどもっ」

青筋をびしっと浮かべ、二人の男に向けて睨み付けている。

「あ、そういやそんな人も居たかも」

叫んだ人はヒロインが事件を解決する前に騒ぎを起こした人達を諌める系の苦労人だ。
その人はいつも苦労を背負っている。
特にこれといって名前がないモブだ。

「モブでも一番苦労してる人だ」

毎回止めるその人はギルドでも古参だ。
哀愁漂う枯れた感じ。
あまりにも気苦労な空気に同情してしまう。
たまにこっそり手伝ったり話しかけたりしようっと。
いくらモブでもキャストなんだから愛着は同じくある。
騒動が沈静化しそうになっている。
納めたその人が周りから離れたのを見計らい、モブに話しかける。

「あの、ご苦労様です」

一言でも言いたくて。
その人は話しかけたこちらを怪訝そうにみずに苦笑しながらもありがとうと言う。
く、かっこいいな。
こういうところで厄介ごとを押し付けられる体質になってしまっているのか。

「もし良かったらこれどうぞ。胃薬です」

その人に渡す。
良かった、受け取ってくれた。

「ありがとう」

こういう人は癒しだな。
ローとキッドを止めると言う大仕事を終えた男を見送り、ローのところへ向かう。
魔法書で遠くを見て彼らを探す。

「あれ、居ない?」

首を傾げながら見渡す。
シャチ達は居ない。
他の団員達なら散らばってるんだけど。
リーシャはそちらへ向かいながら歩いていると突然肩を捕まれた。

「え!」

びっくりして振り返ると、そこに居たのは探していた人。
どこか不機嫌そうな気がするのは勘違いなのか。
それともキッドと戦っていたのに途中で止められてしまったことか。
でも、八つ当たりするような人ではないのだが。

「どうしたの?お腹痛いの?」

トイレなのか?

「うるせェ」

えええええ。
めっさ理不尽。
体調を心配したのに。

「煩いってなに、煩いって」

「黙れ」

えええええ。
二度目の理不尽さに困り果てそうだ。

「いや。ローに言われて黙るなんて可笑しいじゃん?」

そうだよ、漫画とかで黙れとか言うキャラに圧されて黙るキャラとか居るけど、それってどうなのってたまに思う。
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