37
その度にローのイラッとした空気が増える。
『でも、あの目だけは好きかも』
ローについて本人の前で褒められないから裏バージョンをうっとりと語った。
裏バージョンの方が実は気に入っている。
あのわっるい感じがクールでイケテるのだ。
おまけに悪い人が二次元に限り萌える女である。
みんな忘れてるだろうからもう一度言う。
そして自分のアピールの為に言う。
こほん、と咳をする。
「目の前に座ったりなんかしてどうしたの?」
「特に理由はない」
「ふうん?あ、今前のやつの記事見てたんだけど、あれからあのドミノマスクの人のことなんか分かったの?」
あの目につけるマスクの名前そんなんだった。
あとから調べたのだ。
メンドクサイし一々思い出すのが大変で。
「知るか」
「えっ?」
聞き間違えかね?
「調べてくれるってロー以外は言ったよね」
「おれが知るわけねェだろ」
「片鱗くらいは聞いてないの。どう見てもあそこに居たってことは関わりがあるよね」
「幻覚でも見たんだろ」
ローは見られた件をあやふやにしたいんだろう、この言い様は。
マズったもんねー、目の色見られたんだもんねー。
全部筒抜けなのを彼は知らないので必死だ。
「それを抜きにしてもなーんか気になる」
「どこがだ」
あ、おお、なんかめっちゃ食いついてくる。
「どこがって。目の色?とか、雰囲気?顔わかんないんだからそれくらいしか見れたとこないからさ」
「押し倒されたくせによく言えたな」
なんか機嫌悪くないか。
いや、本人褒めているのに怒るわけがないな。
リーシャはのろけとも取れる事を悪気もなく吐く。
「目が合っただけだけど、雰囲気だけでもあれは良いなって思えた」
中身ローだしね。
良い男詰まってるのは当然。
「いつまでも弛んでるな」
空からお菓子が降ってきそうな事を言われた。
あまーい。
何に怒ってるのか分からないが、心配されてるんだって勝手に解釈しちゃうね。
しかも、強き発言しちゃってまあ。
友人なんだか良く分からない関係だけど、結構攻略出来てそう。
助けたりしたしねー。
「はは。弛んでるなってなに?ゴムみたいな?」
ふふふ、と笑う。
「顔もまともに分からない男をそこまで褒められるのが可笑しい」
ムスッとした顔で返されてあははー、と笑う。
「見たよ。全体像。ああいう雰囲気の人はきっとヤバイよ。絶対キャーキャー言われる」
「聞いてらんねェ」
ガタッと席を立つ音。
おや、もう行くのか。