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「#エロ」のBL小説を読む
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01
女神からカクカクシカジカという超展開に見回れたわけでもなく、伝説の勇者になれと神殿で目を覚ましたわけでもない。
ぱ、と目を開けたら民家の前に居て、この異世界の情報が頭の中に整理され、それを引き出せるようになっていた。
元々この世界の人間であっても違和感無く。
その民家のお宅に拾われ世話をされ、一年程経った時、叫んだ。

「ここ私の知ってるゲームの世界なの!?」

いやいや、ちょくちょくそんな気配はしていたけどさ。
だからってなんでこの世界かなぁ。
ぽやぽやしている暇はなく、早速自分なりにどうにか動揺を沈めようと努めてみた。
頑張った頃には、徹夜をしてしまったのだがそんな些細な事は気にしていられん。
取り合えず、どうにかして現状を整理した。
いくらこの世界の知識を得ている中でも、まさか、と思うではないか。
たまたまそうだったとしても、そんなの分かる訳がない。
二次元と現実を合わせるなど、モデルにでもなったという前提がなければ照らし合わせる事もなかったと思う。
落ち着け、自分。
よし。

「この世界は」

住んでいた地球では所謂フリーゲームと言われたものを作っていた。
どちらかといえばストーリーに重きを置き、だが戦闘も細かく作っていたのでそこそこ有名になった。
配信者やユーザーにも人気で、シナリオ制作を自分は手掛けていた。
主に一人のキャラクターを担当していた。
所謂過去に暗いものを持つカリスマ性に富んだ男。
様々なイベントでヒーローキャラクター達を裏で細工しハプニングに陥る原因を作る。
その男と周りを書いていた。
プログラムやらは全くの範囲外なので、魔法に関してはてんでダメダメだが、そのキャラクターだけは原案者ではないが、心のうちと過去を手掛けた。
お陰さまで人気キャラクターとなり、リーシャも自分のように嬉しかったのを覚えている。
さて、ここまで語ったならば言ってしまおう。

「そいつが居るっ!」

まさに、手掛けたキャラクターが現実に存在している。
なぜ分かるのかというと、田舎に居ても届くニュースの中に【ハート団】というものが見え、つい震えてしまった。
おわ、まじで存在しちゃってたよ。
つまりは黒い組織の【メロウ】も存在しているかもしれない。
【ハート団】のもう一つの裏の顔が【メロウ】だ。
メロウが問題を起こしハート団がそれを解決したりしなかったりして、凄まじいマッチポンプを作り、利益を得る。
ハート団とは仮の姿なのだ。
その原因というか、トップ、またはリーダーがまた切れ者で。
もうこの話し後回しで良いか。
どうせ嫌でもまとめなきゃならないし。
この世界に落ちて直ぐ、目の前でトラブルが起きて、夢心地に過ごしていたらとある人から魔法書なるものを貰え、現実逃避に近い日常を過ごせた。
しかし、今日からはそうはならない。
なぜならこの世界がどこなのか知ってしまったからだ。
まだこの世界の事を知っていただけでもマシだ。
なんの心の準備もなく新天地など苦渋を舐めることになっただろう。
唯一出来た友達にはきっとこの世界に気付いたことを遅いと飽きられるだろうが。
でも、やはり二次元を現実にすると全く別ものになるのだ。

「でも、仮に」

ここは田舎だからハートやメロウが活動する地区には遠い。
それこそ新幹線でもなければ途方もない。

「でも会いたいかなー」

いや、会うとまではいかなくても、チラッとみたいな。
ミーハーとは言えないくらい愛情を注いだキャラクターに会いたいという気持ちは日々膨れ上がるかもしれない。
しかし、冒険者として異世界を旅したい衝動にも負ける。
まだ先であるものの、一大イベント(事件)が起こる予定の国でリアルタイムで見たい。
予感は的中し、乗り合いの馬車を予約してしまった。
その後になるが、居候をしていた家の人に旅をするうまを説明し送り出して貰えた。
と、そこまでは凄く平和だったのだ。

「ぎょええええええ!?」

誰か、と声にならない叫びが吸い込まれる。
乗り合い馬車に居ると上から大きな影が降りてきて、皆が認識する頃にはそれがただのコイではないことを知る。
魚のコイだったし、コイは肉食じゃないという認識のせいで皆がチリチリになって逃げ出す意味が分からなかった。
ただ、巨大だから皆怖さに逃げたのかと思ったのだが、どうやら違ったっぽい。
あ、と思った時体がおっきな口の中に入れられていた。
うそ、コイは雑食じゃないの。
あ。

「モンスターだから人間も食べるんだー!」

思い出した時には既に遅く、空飛ぶ魚の中に丸飲みされていた。
溶かされたくないので必死にピッケルみたいな道具で体の内部を刺したのだが、コイ擬きには効いていないよう。

――ネチャネチャ

粘液が体にまとわり付いて気持ち悪い。
なんで出だしからこんなことになるのだろう。
そもそも運が良いのなら異世界へ来たりなんてしなかっただろうけど。
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