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「#エロ」のBL小説を読む
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皆が口を揃えて都市伝説のメロウを前に出すので、誰も本当にメロウが関わった事件だと思うことはない。
メロウは存在をしていないというのが世界の人達の認識ゆえに。
ハート団という隠れ蓑があるからかもね。
思考に没頭していると不意に犯人らしき人の姿が丁度目に入り、心の中でなるほどと思った。
流石に事件の一つである首謀者についての知識と詳しい犯人の事柄を覚えてはいなかったが、悪魔の系統である魔族なんだなと知る。
魔族というのは、この世界が人間と魔族が入り交じる世界に存在する亜人のことだ。
というか、人間以外が亜人というのだとざっくりした説明になる。
悪魔タイプだと分かったのは捻りの入った頭から生えた角が見えたからだ。
亜人の犯行ということはまた、新聞が大きく亜人についての非難を書き連ねるのだろうなと苦笑する。
別に差別というものはないが、新聞が面白くする為に敢えてそういう風な事を書く。
書かなくとも人質にされた人達は亜人に対する不信感を残すことになるだろうけど。
亜人と言えば、この町に来る前からの友人達を思い出す。
人魚の亜人で童話の人魚姫のような外見をしていて、まんまそれだ。
尾ひれのついた鱗の下半身に人間の上半身。
真珠やらを取って生活している。
陸は得意でなく海から基本的に出ない。
で、その悪魔の話に戻るが、悪魔系達は客を一ヶ所に集めに何か、あれは魔方陣――を書き出す。
悪魔が召喚とはバリバリ匂うぞ、危ないことが起こりそう。
でも、魔方陣のイベントもたくさんあるし、おおざっぱな内容しか覚えていないことを今思い出し、完璧だと意気込む己を恥ずかしく思う。
まあ、たくさん有りすぎて覚えきっていないこともあるからね。
ねっ。
自分に言い聞かせてなんとか眺めることを続ける。
ここに居れば巻き込まれる事もなし。
のんびり観察するには最適である。
人が見ている前で派手なパフォーマンスをするのが目的だからか、魔方陣を光らせて人々の意識を魔方陣に集中させる。
まだハート団は来ないのかね。
この後の事はシナリオで知っているので別のところを見ようと移動する。

「ちょっと待ちなさい」

キャシーが犯人のところへ突撃していくのが見えて絶句した。
おま、と思う。
いつの間に建物の中へ入ってたんだ。
それに、堂々と待ちなさいというにしては杜撰な気がする。
酷いぞヒロイン頭緩いぞ。
どうせヒロインが死なないのはお約束であるからに、見ていく必要はなさげなので予定通り別のところへ向かう。
キャシー頑張れ。
適当な事を込めて去る。
よいしょよいしょと手で移動していると丁度良い空き部屋を見つけたので降り立つ。

――タン

自分なりな満点ですらりと足を着地させた。
あまりの華麗さに怪盗になった気分だとうっとりしていると後ろから羽交い締めにされる。
なんだ!?と異変に肘を折って相手のお腹へ当てる。
しかし、上手くいかない状態で床に組伏せられた。

「女……どうやってここへ入った」

首を回し顔を拝見。
げ、げええ、なんで、ここにローが?
悪の組織のトップがなんでここにいるんだ。
しかも、メロウのトップバージョンで、仮面と全身黒装備で顔は見えないようになっているが、メロウバージョンを知っているから瞬間で分かってしまう。
くそ、と悪態をついてしまうのも仕方なしだ。
しかも、後ろを取られてしまうとは不服。

「あんた誰。人のこと羽交い締めにして押し付けてる癖に質問に答えると本気で思ってんの」

初対面ですよね感をなんとか取り出す。
ロー的にはバレてない全体だもんな。
身動きが取れないがもがいておく。
もがかなくなると排除されるかもしれないし。

「生意気だ。聞かれた事に答えろ」

へえへえ、なんて、簡単に答えちゃ可笑しいだろう。
絶対答えないというのが正しい選択肢。
てか、このシーン本来キャシーのやつ。
組伏せられてんのはヒロインの筈だ。
ヒロインが悪魔達のところに突撃なんてするから変な風になってしまったんだきっと。
フラグ建築士が行方不明とか笑えん。
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