×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
33
まだ向こうからこちらは見えていないようで、そこに居る人達はドレスコードをつけていた。
雰囲気も何もかも遠い出来事に思える。
どうしてまだ異変に気付いてないのだろうと考え、もしや魔法結界は始まりに過ぎないのだろうかと考えた。
プロローグでは既に魔法結界も占領も完了していたから考えたことなんてなかったけど。

――ザワザワ

談笑をしているけど、今まさに変な事が起きているのです。
心の中で思うが、絶賛不審者だから姿を現すのも声を出すのも控える。
どちらにせよ、当事者になるわけにも行かず、どこかへ隠れていよう。
例えばトイレとか。
トイレにまで来られたらアウトだからトイレの上にある排気工の所を取る。
この上なら探される事もない。
よし、と息を潜める。
あれ、もしかして会場のところまで行けばそこの様子を見る事が出来るのか。
そうだ、そうしよう。
なんてアクロバットな体験をしてるだと思いながらもやはりわくわくしてしまう。
少年のような気持ちとはこのことか。
染々感じながらもいそいそと前進。
会場の熱気を感じる距離まで来た。
見下ろすと全貌は見えないが断片的に見える。
起きることもそうだが逃げる時のタイミングを見定めねばならん。
全員が解放される時、かな。
わらわらと出ていけば紛れられそうだ。
それを上手く出来るかは己の手腕にかかっている。
なんとか情報を得ようと少ない視界を動かしていると小さく悲鳴が聞こえた。
え?覗きがバレた?
というわけてではなかった。
どうやらその悲鳴を皮切りに伝染病のように恐いか細い声が伝っている。
始まった。
合図のように思える。
犯人という名の計画犯が姿を現したのだろう。
わお、まるでフィルター越しに映画を見た。
改めて悪役がひしめく世界に来ちゃったんだと実感するなこれは。
悲鳴と戸惑いが生まれる部屋にどんどん人が纏まり、集会のように真ん中に魔法の杖らしき棒を持った人達が占領する。

「なんなの」

客の声が騒動に紛れてやってくる。
ざわめく中、犯人が何かを言う。
最初の方は他の声で聞こえなかったがまとめるとここを占拠し貴様らを人質にする、という文である。
目的は金銭ではなく混乱だ。
ここで騒動を起こしてこちらへ外に集まるだろう野次馬と警察組織の意識を集中させる。
その裏で他の犯罪を起こす。
なんだったか、確か、取引だったかね。
で、メロウがプロデュースしているこの犯罪は逃走の場所と方法、その他の水面下での支援。
因みにメロウの所業が全く各地に広まらない、幽霊なみの扱いなのかというと、悪党や悪人が自分達の罪をなくそうとする常套句が「メロウがやった」とメロウをバックに取引したことを匂わしたりするから、戯れ言であり、罪を軽くしたいがための方便だと周りが思っているからだ。
本当に手を借りている悪人達は巧みに隠している。
メロウも揚げ足を取られることなど残さぬ。
今回も例え実行犯が捕まっても計画犯は存在さえ認知されないだろう。
prev * 33/79 * next
+bookmark