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「#エロ」のBL小説を読む
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- ナノ -
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むかむかとする気持ちを胸にズカズカと進めば慌てる声音が追ってくる。
待って、と言われるが誰が待つかー。
ふん、と憤りながら店へ入ろうとするとキャシーが魔法を使う気配がする。
振り向いた時には、違う場所に居た。
もしかして、転移を使ったのか。
キャシーはヒロインだから奇跡的に使えたのかな。
でも、それは単にたまたまだったらしいから、自分しかいない。
転移したがヒロインは一緒に来れなかったらしい。
これって魔法を故意に使い、人の意思を無視した行為にあたり、当然処罰の対象である。
こりゃ、探偵業も廃業だな。
流石に減点される。
報告せねば、役所に。
飛ばされた場所を見ると建物の中であって、きらびやかな音楽が流れる。
まさか、この風景は犯罪が起きる現場というものなのではないのか。
ヒロインが考えていた場所と連動していてここへ飛ばされたのだろう。

「やっぱりか」

ぽつんと一人のまま居ると、埒が明かない。
てくてくと歩き出す。
聞こえてくる音楽はダンスをしているような楽器の音。

「現場かあ」

厄介な場所に来てしまった。
キャシーめ。
絶対に文句言ってやる。
その身に鬱憤を膨らませていく。装飾品を見る限りお金持ちの催しだ、これは。
周りを見渡しながら絵を見る。
花や人を描いたものが一定の差でかけられている。
屋敷というよりも催しをする大きさの建物らしく赤いカーペットが敷いてあるしプカプカと水に浮いているような感覚。
靴の音も立てられない程のふかふかさで、靴が沈む。
ここへ来てしまったからにはどうにか外へ出たい。
当事者になるのはなー、ちょっとねえ。
本当は巻き込まれたいけど、ロー達にそれを見続けられるのも不味いと、拙いと分かっている。
今はバレぬようにどうにか出る手だてを。
てか、ヒロインここへ来て元の場所に戻してくれ。
ここまで連れてきたんだろうに無責任さに怒りが湧く。

――シャン

鈴の音がする。
そういえばこのイベントにプロローグがあり、最初の一文に鈴の音についての呟きがあった。
結構気に入っているところだったので沢山あるシナリオの中でも郡を抜いてのお気に入りだった。
鈴の音がするのは魔法が使われたからだ。
キャシーはその細かな部分を勘で聞き分けられるのだと設定があった。
どうやら魔法の結界がおきてしまい、外へ出ることは無理になる。
魔法ということは結構な使い手が背後に居るな、これは。
苦々しく思いつつ必死に打開策を考えているときらびやかな音がはっきり聞こえている事に気付く。
どうやら歩いている内に事件の現場に出てしまったらしい。
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