28
ワクワクした気持ちで当日。
だが、迎えたのは沈み行く気持ちとダルい体。
風邪。
ベッドの中でハァハァと息を吐く。
ローにはハート団を通して伝わっている筈。
なんてベタな展開なんだろう。
――ドコォ
ひしゃげる音と部屋の内装が元に戻るのは同時。
何事だと扉方面へ体を向けると禍々しいものを飛ばすメロウのリーダーが居られた。
「あ、ど、どうひて」
あ、噛んだ。
「あんだけ言ったくせにこねェとはどういう了見だ」
いや、風邪引いちゃったし。
そんな無茶なと思う。
誰だって行けなかった。
そう言いたくてもローの雰囲気が禍々しい。
「私が居なくても楽しめるような祭りだよね?皆と行ってきてよ。お土産待ってる」
気にしなくて良いのに、わざわざ来るとかツンデレですか?
可愛すぎかこのやろう。
「私の事心配になって来ちゃった?」
にまにまと笑いを布団で隠して尋ねてみれば、ツンツンした反応が帰ってくる。
「あまりにもみすぼらしくて今にも壊れそうなとこに住んでると聞いたから見に来ただけだ。噂に違わずな所だな」
鼻で笑って言うけども、ここに来たがる理由としては弱い。
ふーん、やっぱり気になっちゃったんだろーねーっ。
にやにやしてしまう。
閉口閉口っと。
目までとろんとして、あ、風邪のせいかそれは。
「ちょっと寝るね」
おやすみ、と言うと「おい」とか聞こえたけど無視して休んだ。
流石に表向き善良な活動をしているハート団のボスだから、疚しいことをすることもないだろう。
ま、されても良いんだけどね、ここだけの話。
めっちゃされても幸せしかないんだけどね。
寧ろ、襲いたいの我慢してるよ。
病人装って体を傾けるー、なんて真似をしたいと思うくらいにはメロメロだよ。
カッコワライ。
***
「わ」
汗をかいた感覚に目を開けると椅子に座っているローが居て、思わずと声を上げた。
その声に反応し、顔を上げる男。
片手に何かの本。
この部屋の本だ。
何か見られたら不味いものは魔法書に纏められているから見られても何ら不都合はない。
魔法書は認定された持ち主にしか可視出来ないという代物なのでローに見える事はないのだ。
目をぱちぱちとしているとミニテーブルに袋が置かれていた。
ローが来た時にはなかった。
「あいつらが買ってきた土産だ」
目で指し、説明されぽわんと心に暖かいものが流れた。
好意でしかない行動に好意の返しをされると尚、萌える。
あー、可愛いなハート団。
手のひらで転がされてても可愛いな。
「食べたい」
袋を取ってくれという意味で言った。
が、彼は違う解釈をし自ら袋を開けて食べ物を寄越した。
あーんされないだけ飛躍していないが、それでも緊張する。
だって、今までこんな雰囲気なかったよ。
何かを渡されるとか。
「そういえば、ローは再会した時からなにか言いたがってるね」
ちょうど良い機会だと話を出す。
二人きりだし。