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町での騒動もなく、無事にあのボロ宿に帰って来た。
勿論部屋に戻ればホテル並みの内装にする。
例の友人から貰った魔法書をペラリと捲ると、分かりやすい手引きが書いてあるのだ。
今からするのは香水を作る魔法だ。
魔法と言っても「えーい」と唱えて指を振っただけでポンポンと出てくるお手軽ではない。
魔法というより錬金術だ。
材料は聞いたことがあるハーブ。
ゲームでは手に入りやすいハーブだから、街道にでも生えている。
ブチッてくれば良かった。
他の材料もいるから手間にはならんな。
香水を入れるビンも作るのと、瓶の型も作らなければいけない。
面倒ながら楽しい。
――ガサッ
鞄に魔法書を入れて香水の材料を採取しに行く。
本業は冒険者じゃないし、依頼でもない。
自分の趣味。
外へ出ると天候も良く、採取日和。
街道でハーブを取ったら次は調味料のメマイというものも必要。
「メマイ?」
ゲームには沢山材料があるから覚え切れない。
が、魔法の書は写真つきだからそこまで苦労はしない。
歩いていると街道前のところでハートの団員の一人にばったり合う。
20人は居るから町で会う確率は高いんだな。
「おひさ」
「今から外行くのか」
「うん。メマイってやつ取りに行くの」
「メマイ?ってあの?」
「どの?」
お互いクエスチョンを飛ばし合う。
「レシピには書いてあるから詳しくは知らないけど、兎に角入れなきゃ」
「いや、メマイって……ま、まァ良いか 」
そんなどぎまぎする程の材料なのか?
詳しく書いてあるけど、そこまで戸惑うことは書かれていない。
「ハート団に護衛依頼でもするか?」
冗談じみた口調で言う。
確かにそういう依頼でも楽しいかもしれないが、ハート団は結構受ける依頼を選ぶところとしても有名なのだ。
前の集団睡眠事件はプロデュースしたから来た。
それを知っている身としては多分依頼してもダメなんだろうなと思う。
「やりたいのは山々だけど依頼額高そう。やめとく」
リアルな問題的にあんなにボロいところに泊まっているのにお金を出すのも違和感を持たれるだろうし。
なので、無難に避ける。
でも、本音では凄く依頼したい。
ハート団と更なる交流の高みへ。
しかし、ローとの交流もしたいなぁ。
あの人が若いからまだ隙間に滑り込める可能性があるから、頑張りたい。
でも、道程は長いな。