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10
今回はかなりの確率で主人公の女が居ると思う。
が、新聞では見たこともないので、もしや居ないのではないかと思ってもいる。
だが、移動した所で彼女を見つけ、あ、居たんだ、と確信した。
てくてくと歩いている様は新人の探偵だ。
探偵帽子はないが観察している。
彼女を素人丸出しの後追いをすればバレるのでやらないが。
きっとメロウを追ってきてここまで来たか、勘が働いたか。
彼女の名前はアルザス・キャシー。
師匠を持つ探偵娘だ。
因縁と呼べるほどメロウの事件に当たる。

「ねぇ」

そのキャシーが声をかけてきた。
別に見てただけなのに。

「はい、なんでしょう」

「この辺で何か噂とかないかしら」

ああ、インキュバス絡みとか。

「ここに来たばっかなんでさっぱりです」

お役に立てず、と言うと彼女はがっかりした。
おざなりに「そう」と言い去っていく。
ヒロインなんだから歩いてれば勝手に事件に巻き込まれる。
運が最強。
羨ましいと同時に憐れな役目だ。
あ、そういえばロー達も救援要請でこの町へ来る事になるのか。
メロウとして裏で動き、表で解決するのが本来のお仕事なのだし。
マッチポンプって便利だし良いなあ。
被害に合う方は堪ったもんじゃないけど。
パンを食べながら町を見ていき、お気に入りの花屋さんを見つけたりした。

――2週間後

よし、イベントは起きた。
なんていうか、予想通り。
ゲームのシナリオのまま。
なんの捻りもないのが若干気落ちするが、例外なく娘達が眠った。
リーシャはそういうのを避けたから眠らなくても良い。
範囲外だったのだ。
やはり町中はパニックに陥り緊急の要請がギルドに送られたらしく、ハート団がやってきた。
町は歓迎ムード。
まだ解決していないのに、あたかも終わったような顔をしていて、結構ムッとした。
皆楽観視過ぎる。
あと、地力懇願が過剰だ。
少しくらい手だてを考えるとかあるよね。
リーシャは過剰な睡眠に効くと教えられた花を発覚した日にすりつぶして煎じた。
やり方とかは知らないので初心者レベル。
だが、医者だって原因不明だって匙を投げた。
まだ一日も過ぎてないのに。
この世界の人って強者にもたれてる気がする。
だから、その強者に揚げ足を現在も取られているのではないか?
周りの姿勢を疑問に思いつつ、一人一人に花を飲ませていく。
しかし、寝ているので飲み込んでくれない。
どうしようかと思っていると、隣に人が佇む気配。

「?――あ」

横を見ると直ぐにハートの人達の一人だと気付く。
相手も理解した途端に弾けた笑顔を浮かべる。

「よっ。見ないと思ったらここに居たのか?」

インキュバスのプロデュースでここにリーシャが居る事を知っていたと思っていたが、本当に知らなかったようで、目を丸くしていた。

「うん。こんなことになってなんとかしなきゃって」

片棒を担いでいるのは知っている。
けれど、ハートとして活動しているのだから少しでも手伝ってもらいたい。

「どうやったら寝ている人に花を飲ませられるか知ってる?」

「んー。点滴じゃないか?」

派遣されてきたから一応は考えてきているのだろう。

「点滴か。点滴の扱い方知らないから……」

「おれ知ってる。他のやつも呼んどく」

男はそう言って念話をした。
念話してる人って視線が少しウロウロする。
終わったらしく、今来るってよ、と言われた。
ありがとう!と力強く伝えると照れたようにはにかむ。
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