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それからの日々はハートの海賊団の船長に指名されるまでの日々と変わらなく、つつがなく過ぎていく。
時々新聞紙を拝借してハートの海賊団やローに関しての残虐性を主張する記事を見た。
ダッカー海賊団の船員達はそんなハートの海賊団の活躍に優越感を感じているらしく、居間や集まる部屋でこれが自分達と同盟を組んでいる船なのだと自慢気に言っている。
リーシャは彼らがお節介を焼いている所しか体感していないので、こんな酷い事件を起こせたのかと言う驚きがあった。
彼らも紛れもない海賊なのだと染々と思う。
それに習う様にダッカー海賊団も残虐を競うよつに暴れたりしていく。
前まではマシな空気だったのに、今ではどこか船がピリピリもしている。
ダッカー本人の調整不足がここに来て起きてしまった。
そういえば、人員交換がまた行われたらしいが、ローの船では交換しないと言ったが、ダッカー側からだけでもと、一人の女性が赴いた。
前はたまたま女というだけで、次も女というのはストレート過ぎる。
普通、男を行かせるのが最善なのではと思うのは、自分だけなのだろうか。

またダッカー海賊団の悪行が酷くなり、捕虜に対して酷い真似をしなかったのに、女を誘拐してきて見るに耐えない真似をし始めた。
リーシャがなにもされなかったのは、自分の顔を覚えられる前にクローゼットへ転がりこんだからだ。
それを思い付かない女は日々衰弱していく。
これは不味い、と人並みの危機感を何故か発揮させてしまい、こっそりクローゼットに押し込んだ。

「し、静かに。ここはとっておきの場所。無事に過ごしたかったらここで息を潜めて。まだ逃げる隙がないから、静かにして。ここでずっと待っていればいつか、どうにかなるかもしれない」

一応手招きして付いてきたから、合意を得たと思っている。
女はこっくりと頷く。
出来るだけ無言で過ごすようにと注意して、女と二人の生活が幕を開けた。
女は順序良く従ってくれたのでスムーズに過ごせた。
そんな折り、また同盟同士の会合とやらが開かれると耳にした。
そんな日なら、人目を掻い潜り陸地にやれるかもしれない。

会合の日、ハートの海賊団の船が見えて久々の気持ちが湧く。
ダッカーなんかよりも出来た男、ローの事を思いだし、もうリーシャのことなんて忘れているのだろうと思う。
だって、ハートの船員なら覚えていても、他の海賊団の船員を気にするわけがない。
極当然な記憶処理。
懐かしさと合間って、心が震えた。

「ここで待ってて」

念押ししとく。
万が一にも見つかって女が捕虜と思い出されれば逃げ出す機会は永遠に失われる。
甲板をなんとなく窺うとローが前よりも機嫌悪そうに立っていた。
その近くにはツナギを来ていない女、ダッカー側の人員交換した人員だろう人物も立っていて、彼に意味ありげに寄り添っていた。
あれは流石に分かる。
同盟を決裂させる恐れのある不穏。
ダッカーが気を抜きすぎて眼が節穴になったのだろうか。
決して人柄が良さそうにも見えなくて、ハートの海賊団の船員達も些か女を不審に見つめている。



***

ハートの海賊団side



「人員交換、っていうか、おれんとこの船員を寄越すな」

一方的に言われたものの、二人目なら更にダッカー海賊団の人となりを分析出来ると思い、承諾した。
しかし、予想に反して初日からローの周りに侍る。
口癖は「同盟を組んだのだからダッカー海賊団として交流を持とうとしてるだけ」という。
正直、それを建前にした女がローに四六時中ベタベタしているだけに見えた。
船員達にもローと同じように見えたに違いない。
次の日から女を同盟相手ではなく、敵として認識している視線で接し、必要最低限の扱いをした。
しかし、それでは納得しない女は同盟を破棄されても可笑しくない言動を取る。
時々、この女はダッカー海賊団とハートの海賊団の同盟を破棄させる海兵の回し者ではないかと思ってしまうくらいだ。
だが、観察した結果、只女を全面に出してくる愚か者でしかなかった。

「触るな」

「怒らせちゃいました?そんなつもりなかったんですけど」

ニコッニコッ、と何が愉快なのか笑みを終始浮かべる女が気持ち悪くて自室に籠る。
ここにいれば女が来ることはない。
船員達もローの意を組んでいるらしく、ローが嫌がる女を自室以外で近付けない様にした。
こういう時、理解のある部下は有りがたい。
前の人員交換の時、来た女と全く正反対だと苦々しく思う。
あれはローが直接指名したから、ローの船へ来たがった者ではないだけだったのだろうが。
それでも、今、船にハズレを乗せているのは誰の目にも明らかである。