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その後、スヤスヤと快眠出来て朝を迎えられて満足だ。
ローに刀の鞘でコツかれ起きるとズルリズルリと引き出しの様に出される。
慣れたものだと誰目線な感想を浮かべた。

「着替えろ」

「これが私服」

パジャマと思った?
錯覚だよ。

「嘘つくな」

あきれた声音で再度着替えろと言われても、服などもうない。
洗濯に出している分で全てなのだ。
そもそもこの服は女船員のものを無理矢理着させられたから今服を来ているのだから。
こんな短期間でぽんぽん着替えるなど想像していなかったし。

「でも、服がなくて」

だからこれを着させてくれと続けようとすると、ローが徐にクローゼットを漁り、一枚のパーカーと短パンを投げつけてきた。
それが服だと知れると、おお、と感嘆の声を上げる。

「良いの?だって、これ」

貴方のなのに。
申し訳ない気持ちになると彼は別にと言いそうな顔で一瞥して「着替えろ」と命じる。
キュッと服を握りありがとうと伝え着替えられる場所へ行く。
着替え終わるといつもの習慣の為か、ベッドの下から出てきているのに船員達に両腕を掴まれた。
宇宙人スタイルと密かに呼んでいる。
ベッドの下やクローゼットに隠れていると誰かが発見して引きずり出して、二人がかりでぶらさげて食堂や移動に行動するのが常になっていた。
そうしないと歩くことさえしないと知られてしまったから、こちらの方が楽だと思えたし。
だから、抗う事もなく力を抜いて人為的に運ばれる。
流石にダッカー海賊団の面々が居る所では直前で解放してくれたから良かったけど。
そうじゃないと、下手をしたら人質を取ったみたいに見えるのだ。
同盟を結んだのに勘違いで不和を生むのは憚られる。

「お疲れ」

「どうだった?」

既に全員揃っていて互いの人員を戻す。
そして、彼らと言葉を交わすハートの海賊団を見て、こちらはと、見ると別にこれといって労りの言葉もかけられることはなかった。
ダッカー海賊団の皆も面識も意識も記憶にない女にかける言葉は見つからないのだろう。
そもそもこいつ誰だ、という視線も中にはあるから、己の存在感が薄い事を思いだし、これで良いのだと満足に思う。
そうでなくては、今特にこれといって話した事もない人たちに囲まれても内容が考えられないので、話しかけられなくて良かった。
このままハートの海賊団の団欒を見るのも流石にアレなので、そのまま見ないで船の中に行こうと歩き出す。

「おい、ダッカー」

ローの声が聞こえて反射的に立ち止まる。

「なんだ?」

「お前んとこの船員は一体どうなってる」

「んっ、なんのことだ?」

不味い、ローがダッカーに何か不都合な事を言おうとしている。
目立ちたくないから去ろうとしたけど、予定変更だ。

――タタッ

何か致命的な事を言われる前にローの近くに寄る。
やめて、やめて。
言わないでと顔で示す。
わたわたと慌てて手と体が動く。
それを横目で見たローは無表情だがこちらを見た。

「ん、もしかしてなんかやったか」

途端に剣呑になる空気。
しかし、ローはその空気に構わずダッカーに何食わぬ顔で「いや、逆だ」とポロっと言う。
呆気なくさらっと言われてしまうのでこちらとしても思わずピシッと凍る。