それはリーシャだって同じくかっこいいイメージがあった。
同盟と言えばやはり、盃を交わす。
堂々とトップ達が互いに利益を話し、協力し合う。
なのに、ダッカー海賊団が格下なばかりにご指名されてここに居る。
船長にお前は部下をそんなに簡単に引き渡すのか、このスルメ!と言いたい。
スルメなのはタコと違う印象で、まあ適当に言っただけなので深い意味は無い。
「服、昨日も一昨日もきてたやつじゃない?風呂入れ」
お姉さんにまた難癖を付けられた。
動いてないし汗もかいてないので臭くない。
「船長」
お姉さんがローを見る。
ローに止めるよう目で訴える。
しばし間が空く。
「やれ」
ゴーサインが出てしまう。
やれって、やれって。
「動きたくない」
「あたしが洗うからあんたは洗わなくて良い。ほら、動かねぇ」
理論武装されて攻撃された。
ダメージはきっとかなり入る。
やってらんない、うわー!
――タッ
「いい加減学べ」
ローにクイッと膝かっくんされて無様に転ぶ。
同盟相手に怪我させた。
「船長に報告する」
――バッ
顔を上げながら言うとローが目線を下げ、膝を曲げ、腕を伸ばしこちらと頬に触れる。
そのまま顎を持ち、グッと上へ向かせた。
「孤立無援な状態で言うのは利口じゃねェ」
これは、これは苛められているというやつではないかっ!?
「船長に報告しないけど、もう船に戻るっ」
安眠できない船なんてただの意味の無い俳句だ。
「船、ね」
彼はニヒルに口角を曲げ、ピッと指を弾く。
「連れてけ」
どこに!?
遂に、憧れの軟禁生活が送れるのか。
担がれて扉を潜った。
「船長あいつ結構気に入ってるな」
「おれらも気ィ悪くねェし」
「わがままとか、そんな女なら嫌だけど、あの怠慢感は逆に目が離せない」
また食堂がざわつくがリーシャの耳に届く事はない。
「離して。こんな扱い嫌っ」
良い大人なので。
「風呂入ってないやつに行動の自由はない」
皆意地悪過ぎない?
確かに怖くないけど、ダッカー海賊団はここまで団欒じゃない。
小さなグループに別れていて、それで大きな船で暮らしている。
グループに入ってない単体の人も居るから自分が紛れて暮らしていけていた。
また一週間が過ぎ、怠慢な生活をする。
でも、皆が怠慢をさせてくれない。
やれ、ゲーム、甲板、等々と行って外へ連れ出そうとする。
そうでなくとも、誰かしらが居る空間に来させられる。
こうなったらもう配管の中に行くしかない。
っていうか、人員交換早く終わらないかな。
ふうん、とベッドの下で寛いで居ると部屋の主が帰ってきた。
「おい」
え、見つかるの早くないか。
「気配で分かる。人のベッドの下で何をしてる」
「クローゼットが使えなくなったからベッドの下で寝ることにした」
簡潔に言う。
この人は合理的な人だろうからきっと納得してくれる。
「今日は一日見当たらなかったそういえば」
――ギィ
人一人分の重さで軋む音。
どうやら、座ったらしくすらりとした足が見えていた。
それ以降特に話すこともなく、追い出される事もなかった。
結構話の分かる人だったらしい。