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- ナノ -
なんで皆外に出そうとするのだろう。
どうせ別の船の人間なのだから放置すれば良いのに。
ご飯さえくれれば後は適当に生きていくから。

「ほら!ご飯食べにいくぞ」

言葉が荒い女性に無理矢理担がれる。
相変わらずこの世界の人達の体の大きさは異常。

「ちっせぇんだからもっと食え」

トレーを目前に置かれて無理矢理食事を取らせられる。
そんなに大食いでもないから頻繁に食べなくても死なない。
この人達は背的にリーシャを子供かなにかだとでも思っているのかもしれない。

「自分で食べれるから」

ムギュウ、と口に突っ込まれるご飯。
窒息します姐さん。

「おい、まだ食ってねェのか」

眉間にシワを寄せて非難の目で見てくるトラファルガー・ローという船長。
彼の名前を聞いて、やはりこの船はあのハートの海賊団なのだなと改めて思う。
コーヒーを片手に攻防を傍観している。

「あっ、あそこにあんなのものが!」

「ん?」

――タッ

女の人の視線を逸らせて食堂から逃亡を図る。
寝床を変えねばな。

――ガッ

「うっ」

腕を掴まれて扉目前で逃げられなくなる。
掴まれた腕を見るとローが凄い眼光で見てくる。
うわ、こわっ。

「食事を取れ」

有無を言わさぬ声。

「また逃げたな」

女の船員が憤った顔で迫ってくる。
ローがここに居るのは逃げるのを防止する為かもしれない。

「お腹いっぱい。もう食べられない」

伝えたが、相手はまだ納得出来ない様子。

「ちっとも食ってない」

ローが迫る。
二人に尋問されても他には何も言えない。
クローゼット生活が懐かしい。
早くダッカー海賊団に戻りたい。
あそこはリーシャが居なくても生活が回って寝床とご飯も好きな時に食べられて好きなだけ寝られるのだ。
もぎゅもぎゅと食べさせられながら物思いに馳せる。
船に置いてくれていたダッカー海賊団にはありがとうと言えるが、人身交換に関してはお前適当すぎ、と言いたい。
正直自分が真のダッカー海賊団の船員でないと己だけが知っているだけに、本当の交換でない事も知っているので、交換されても意味がないとは思っている。
船長にだって船員と思われているのだから呆れる。
船にこういう存在が居て、いつの間にか居ても船員として根付けるのなら、スパイなんて入り放題じゃないか。

「ほら、グラッセも」

考えている間にもダストボックスのようにガバ、と口の中に放り込まれる。

「最近おれらもやり方分かってきたんじゃね?」

シャチが仲間とカードゲームをしながら誰に言うでもなく呟く。
やり方とはなんの事だろう。

「うんうん。考え事してる時に済ませちまえばこっちのもんだよなァ」

皆もうん、と頷く。

「ところで、船長、あいついつ帰って来ます?」

「さてな、大体半年か、三ヶ月か、取り敢えず情報が集まればまた持ち掛ける」

淡々と言う。
それを聞いていないまま、リーシャは次のクローゼット候補を考えていた。
こうなったらクローゼットを諦めて人のベッドの下に行くしかない。
クローゼットに隠れている事が露呈してしまったので無理矢理探されてしまう。

「よし、漸く食わせた」

姐さんが言うと彼らがお疲れー、と言う。

「でもよ、良く生活能力がないやつが今まで海賊やれてたな」

海賊じゃないからねー。

「おれも思った。あいつ弱くね?船長が弱そうって言ったのはここで預かる時に反発心ないだろって意味であって、まさかここまで軟弱とは」

「最初の日に枕が変わったら寝られませんって、言ってたやつ。あれ、まじ冗談に聞こえなかった」

「今ここで言う事じゃないだろ、とは思った」

「同盟ってもっとこう、かっこいいイメージしてたんだからな」