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良くある話、聞いてみる?
現代からトリップしてきた女がなんやかんやで他の島に行こうとして客船に乗ったらその船が海賊に襲われて、捕虜かと思えばその船は規模が小さかったのに大きく成長して船員として認知され、捕虜について忘れられていた。
まあ良いか、と怠慢に過ごしていればどんどん規模が大きくなっていき今や大所帯。
古株と呼ばれる程には居続けていた海賊船。
なんとなくで居続けられるくらいには人手が足りていたのは幸福だ。
戦いもなにもしなくても欠員がない。
でも、代わりに存在感がないから、誰かに必ず名前を聞かれる。
そんなのダメージにもならない。
ね、よくある話っしょ?よくあるよくある。



「て、ねーよおおお!」

自分で語り自分で突っ込む。
誰も突っ込む人が居ないから自分でやるしかない。
ハッとここが部屋だという事を思い出して辺りを見回す。
相変わらずのクローゼット生活は快適だ。
クローゼットは広い、なので人が一人寝る広さもある。
入れられていたりするわけもなく、自発的にそこで寝ているのだ。
部屋を割り当てられたりして、君、誰だっけ、と言われるならまだしも、船員なの?と疑われるのは嫌だ。
身バレがありそうでないから悠々自適なのだが。
仮に、この船の船長なんかに大々的に見つかって船員として質問されても別に海賊になりたくてなったわけでもないし。
っていうか、海賊じゃなくないか。
寧ろ一般人ジャンルじゃなかろうか。
そこに住む小人さん的な立ち位置だ。
そんな事を常々、否、希に抱いている中、この海賊船【ダッカー海賊団】がハートの海賊団の船と出会った。
大物の海賊団とあわや戦闘かという所で、別に戦闘にならなかった。
なんか同盟を結ぶらしい。
それは後々知った事だ。
その前に遡ると。
その時はクローゼットに入れる小物を探す為に珍しく歩き回っていて、甲板が何やら騒がしいと外に出た。
大きなイエロー潜水艦があって、なになにー、と覗いたのが運の分かれ道。

「そいつで良い」

目の前は人でたくさんだったのに、いきなり視界が開けて、一人ぽつんと謎空間が出来上がる。
なになに?
きょとんとした間の抜けた顔だったにも関わらず

「え?なんでこいつ?」

何度か見てこいつ船長だろうなって思っていたダッカー海賊団の船長が不思議そうに隣に居る何倍も威圧感がある男に問いかけた。
こわっ、この人絶対怖い人。

「弱そうだからだ」

確かに見た目通り弱い。
でも、なにが弱くて指名されたんだろう。

「なるほど。お前、ハートのところで同盟組むための人員交換するから行けよ」

船長みたいな人に言われて肩が跳ねた。

「無理です!わたし、枕が変わると寝られないんです!」

詳しく言えばクローゼットが変わったらなんだけどね。
生死に関わる精神面の難題に真剣に言ったのに、なぜだか両者の空気や顔がぽかんとしたものになった。



***



「あ、またクローゼットに居るー!」

女の船員がクローゼットを開けるので唐突な光に目を閉じたまま「開けないでぇ」と言う。
いきなり明るくなるのはダメだ。
視界にとてつもないダメージ。

「船長、見つけた!」

女船員に脇を掴まれて無理矢理出される。
もう見つけないで欲しい。
安眠したいのにい!

「今度はおれの部屋かよ」

ハートの海賊団の同盟人員交換に輸出されて早二週間。
今はシャチという男の部屋のクローゼットを無断で借りて住み着いていた。
いやー、男は女と違って頻繁にクローゼット開けないから寝る時に起こされないね。
でも、20人しか居ないからリーシャの存在がありすぎて、皆に覚えられてしまうのが難点だ。