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と、いうわけで、やる気ゼロの研修を受けに行き、花丸が出るまでやった結果、一ヶ月かかった。

途中「いつまでかかってんだ」とローからお叱りを受けたがイッカクの後ろで恨めしい顔をずーっとずーっと浮かべたままローを凝視していたら、彼はため息をついて去って言った。

間違った要求と人選に悔いるがいい!
べー!だぁああ!

イッカクは苦笑を浮かべて船長にここまでやれる存在なんてあんただけだよと言われた。
それは褒め言葉なのかな?
取り敢えず照れとこうかな。

「褒めてない褒めてない。バラされないのはあんたの人徳というか、色々ラッキーだな」

それは周りから結構言われるんだよね。
ラッキーなんて言葉で済ませる内容じゃない。

そもそも自分の部下を能力でバラすなんて、現代だったらただの超、パワハラである。
出来るのは偏にこの世界だから。

しかも、無関係な一般人をこき使うことが出来るのも。

素晴らしき海賊時代。

喝采でも必要なのだろうか。
現実逃避を奏でて涙で枕を濡らす。
どこをどう見繕えばこんなにか弱い子を任務へ放り出そうと考えられるんだ。

そんな彼女と話して数日後、佇まいだけ躾けられて仕事先に出された。
無慈悲にも程があろう。
もう少し安心させて欲しい。
こっそり護衛をつけるとかやり方があると思う。
それなのに酷すぎる。
酷使というのが妥当な扱い。

ああ、あー、屋敷に着いちゃった。
なにをされるのか今から怖くて仕方ない。
姉さんに大丈夫だといわれたがどこに安心できる要素ある?
武器も持たせてもらえないとか捨て駒じゃないのかそれは。
私ってポイ捨てされる予定?
怖い、怖すぎるよ海賊。
海賊から海賊に移ってもなんの変化もなかったんじゃ。

今更だけど戦利品(キリ!)って宣言されたとしてものこのこ居座るのはやってはいけなかったことだ。
もっとお互いのお試し期間を設けるなりすれば良かった。
トラファルガー・ローがSなんて分かりきってた筈なのに。
私は部外者だからこういう役目は絶対に受けさせられないと何故か思っていた。

妹ですと紹介されて姉妹で受けに来た設定の面接で即採用。
イッカクは美人だもんな。
私なんて多分ついで採用だし。
く、悔しくなんてないから。
仲が良いから採用というモヤモヤする理由は忘れる。

だって直ぐ辞めるんだから。
そう思ってなんとか我慢。
仕事を始めて思ったのは地味だし、私向きだ。
彼女では目立つので普通に出来ないだろうなと思う。
ローの目論見は悔しいけど順調と言える。

キュキュと窓を拭いていると他の人間は噂話や話題に口を動かす。
こういうのはどこにいっても同じだな。
いつになれば開放されるのかな。
早く枕の中に顔を埋めたい。

と、細々としたことをしながら待っているとこの屋敷の主がオークションをするのかというのが聞こえて、ロー達はこれを狙っているのかと朧気に想像。
タイミング的に今しかないもんね。
オークションをどう利用するのか知らないけど。
ワタシ的にはわざわざ騒ぎを起こす理由が信じられない。
海賊だからなんなんだって感じ。

オークションの日になっても他の人たちは忙しそうであったが、私は下っ端なのでいつもどおりのことをしていた。
イッカクには結局ここへ来た時以外、会うことはなく。
なにをしているのか知らないまま。

「ねぇ、聞いた?」

「真珠ダイヤのこと?」

「やっぱり知ってるわよねぇ」

「凄い綺麗だったらしいわよ」

「素敵。見てみたいわ」

「誰かに競り落とされて見ることは無理になるのよね」

真珠ダイヤとは、まさに異世界の宝石の言葉っぽい。
こちらじゃ聞いたこともない。
ダイヤはダイヤ、真珠は真珠。

ローたちの目的はそれなのか?

疑心暗鬼になる推理はやめた。
私が推測しても分かるわけがない。
そもそもその宝石がどれくらい価値のあるものかすら分からないんだし。
というか、興味もない。

オークションが始まって3時間、特になにもなく続いている。
安どしていいのか、まだ帰れないことを嘆くべきか。
肩透かしで窓を拭いているといきなり屋敷が暗くなる。
メイドたちの悲鳴が聞こえる。

「リーシャ、リーシャ」

呼ばれたので振り返るが真っ暗なのでなにも見えず。
辺りをキョロキョロしているともう一度呼ばれた。
今度は分かるぞ。
イッカクだ。

「脱出?」

そうだ、と来て喜びがあふれる。

「作戦成功らしいし、行くぞ」

うん、とついていく。
手を惹かれているからついていくだけだ。
蜂が蜜を巣に持っていくかのように持たれてせっせよいしょと運ばれていく。
就いたのは巣ーー船だ。
懐かしさすら覚えるくらい帰ってなかったから実家に帰ってきた感覚がする。
ちょっと恥ずかしい。

「潜入お疲れ」

ベポがのっそり歩いてくる。
寝ようとしているみたい。
呑気だなぁあ。

そのままイッカクにシャワー室へ連れて行かれた。
そして、センチョー部屋にポイ!された。
私は捨てられた猫か犬じゃないんだから。
そのまま寝ようとローの枕を強奪。
本人もまだ部屋にいないんだもん。
いそいそとベットの下に潜り込むと寝た。
あ、報酬に色をつけてもらうのを忘れないでおこうっと。