ローはこちらの本音を見極めているのか真剣な顔でジッと見つめてくる。
「それに私、海賊じゃない」
この言葉を発した途端、彼は目を開き驚いているように見えた。
いや、どこからどう見ても一般人でしょ。
ローだって弱いと看破してた。
「謎かけか。意味が……」
全てを説明しなければ分からないのは当然。
今をもって言う時が来た。
――説明後
「にわかには信じがたい。いや、お前は何を考えてんだ」
バカなのかと顔が物語っている。
いや、そう言われても。
行き場が他になかったのだから。
降りても住むところなんてなかった。
トリップしたこと以外は話した。
トリップ話は眉唾で空島以上だし。
「飼い主が変わるだけ」
こくん、と頷いてローを見上げた。
「気持ち悪い言い方すんな」
こつん、と刀の鞘でこつかれた。
「クローゼットが分布領域で」
夢のようだ。
ハートの海賊団にいるなんて。
前は短期間で借りてる状態だったからまた違って、彼の船に居る実感が湧く。
「そんなのあいつらが許さねェよ」
ローはフフ、と笑う。
***
ハートに来てから数ヶ月。
新聞紙でダッカー海賊団が解散したと小さく報じられた。
「また食ってねーなァー!」
アネサンに今日も怒鳴られる。
半日抜いたくらいで減るような運動はしていない。
結局ムダ毛は誰も剃らしてくれないし。
もしかして剃る派じゃなくて抜く派なのか。
「今日はおれんとこか」
船員の一人が笑って報告する。
ここももうだめだ。
違う人のところへ行こう。
「船長。こいつ枕離さない」
入って直ぐ、買ってもらったふかふかな枕は最高の親友となっている。
この子が居る限り安眠も簡単に手に入る。
「没収〜」
「マサミぃ」
枕が取られた。
「人間に付けるような名前つけやがって」
取った人が苦笑している。
「マサミと添い寝しちゃダメだからね」
「いや、マサミよりも長年連れ添った枕あっからっ」
ダッカー海賊のときよりも充実した気持ちの自分が居る。
「おれに貸せ」
「船長!」
ローがマサミ(枕)を取る。
「船長に奪われたらマサミ当分帰ってこねーな」
ニヤニヤした顔で船員達が言う。
確かにローに取られたら帰ってこない。
一体マサミに何をしているのだろう。
「こいつを返して欲しかったら奪いに来い」
ローが愉しそうな目で挑発してくる。
「三角関係のもつれみたい」
誰かが言った。
でもね、あれ枕だから。