×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
ハートの海賊団side


女が早く元の船へ戻らないかと、既に人間性を見極める気にもなれない。
既にダッカーとの話し合いも済み、予定よりも早く引き渡す。
でなければ、船員達もローも女をころしたくなる。

「船長。ダッカー海賊団の船です」

双眼鏡を手に持つ男が船を確認した。
次、人員ならばあのリーシャという女が良い。
ローだけでなく、己の船全員が思うことだろう。
こんな不良品、押し付けやがって、とダッカーに殺意が湧く。
この数日間ストレスフルだった。
おかげて己の隈が濃くなったのは言わずとも誰もが見て分かる程だ。
おまけにべたべたとすり寄るしで、何度切断したかったかと苦汁を舐めた。
なぜローが同盟を結んだ人間ごときに我慢せねばいけないのかという気持ちもあった。
取り合えずサクッと女を引き渡し、宴を開いたダッカーに一度目の堪忍袋がぱちんと弾ける。
なに平然としてるんだ。
二度目の堪忍袋割れた時は、女について苦言を否、文句を言った時だ。

「七武海になってライセンスを得たんだからそんな細かい事言うなよ」

ーーブチッ

その発言を聞いていたハートの仲間達も不穏になるローを見て一滴も入っていないアルコール。
世間じゃ残忍と言われるのに、この男はそんな噂も気にしないほど無神経らしい。

「あの、リーシャってヤツはどこだ」

見回した限り居ないのでまだクローゼット住まいなのだろう。

「リーシャ?んー、誰だそれ」

「………人員交換でおれが指名した女だ」

「やっぱ分かんね。あー、もしかしてお前そいつ好みなのか?」

ーーブチッ

三度目の堪忍袋が切れた。
前日までローの睡眠や安息を邪魔された事もあり、怒りのボルテージが上がるのは至極当然な結果。

ーーコツン

無言でスッと立ち上がり持たされた一滴も飲んでいないアルコールが入ったコップを放物線に放つ。
鈍い音が聞こえる前に船員達がそれぞれ戦闘体勢になり、ダッカー海賊団がこちらの違和感に気付く前にローの刀が空気を裂いていた。



***



何だか外が騒がしい。
ざわざわと言うよりカラスが一斉に鳴いたような。
ダッカー海賊団が襲った人達のざわめきに似ている。
何か起きている。
それくらいは分かるが、今日、今、ローが来ている筈だ。
それなのに命知らずや無謀な無法者達が襲ってきた悲鳴なのだろうか。
既にあの被害者女性は陸へ下ろした。
このまま長居されてもまた暴力を振るわれるかもしれないので。

「おいっ、ハートの海賊団――!」

「知るかっ!」

「そんなことよりっ、ずらかるぞォ!」

「お前ふざけんな!」

「おいてかないで!」

「退け!」

様々なカオスが渦巻く。
そんな悲鳴や騒音がバタバタと聞こえてきた。
何が起きているのかイマイチ分からないが、ヤバい事が起きているらしい。
それくらいは何とか出来る。
もしかしたらこの船は沈没するのだろうか。
それなら、自分も早々に脱出するべきだ。
この船と一緒にと一昔の映画のような気持ちには絶対共感出来ない。

――ギィ!

突然クローゼットの扉が独りでに開いた。
夕方なのでそれほど眩しくはないが、目が暗闇に慣れすぎて上手く目か開けられない。
あたふたしている間にも何者かはグイッと体を強い力で掴み担ぎ上げてきた。
何が起こっているのかと内心パニックになり声も出せぬ。

「船長!見つけた!」

どこかへ出た音がし、海の匂いが濃くなる。
外へ出たらしく海のさざ波の音が拾われた。
まだ目は太陽に拒まれており開けられない。

「好きにして良い?」

「ああ」

テノールの声が是となり、また歩き出す誰か。

「うし、ここに居ろよ」

漸く担がれるのが終わりどこかへ下ろされる。
腕を縛られる訳もなく、自由に動けた。
太陽の光も少なくなったどこかのおかげで目が開けられた。