女は突然やってきてデリカシーどころかプライバシーを越えて持ってきた。
次々とローの過去を言い当てたまでは驚いたが、流石にそこまでいくと暫し唖然と我に返ると過去を知られていて良い気分がしない。
ローは初めから気にくわなかったらしく眉間に皺を寄せていて睨みつけていた。
「気味悪い女………」
相手に聞こえない小声で言った。
余程気持ち悪く思ったらしく、声には正に引いている声音である。
そこまで過去を知っている癖に彼が引いている事に気付かないとは皮肉だ。
ローは女に目を向けぬまま立ち去ろうと踵を返す。
「待って」
待つわけなどないと思っている通りローは立ち止まる事はせず自船に引き返す。
命令するなと言いながらひたすら進むローの後を付ける女はやはり、船に入る事など許されない。
勿論船へ近寄る前に少しでも船へ入ってきたら殺すと言いおく。
(当然の反応)
うんうんと傍等で頷く。
リーシャだってストーカーかイカれた女の類としてお巡りさんのお世話になる。
「おい」
リーシャの思考を途切れさせたローは見張りに変な女が居るから今日から更に見張りを強化するように言う。
ローの為に集った仲間はその意味を汲んで固く肯定して返事を返す。
甲板に上がったローは溜息を零してしまうかと思われたが、そのまま無の表情で自室に戻る。
「あの女、本当にイカレてやがる。おれの解剖したカエルは知ってる癖にクリオネの事は一度も出てこないとはな」
疑問にずっと思っていたのか胸の内を露吐。
確かに自分も少し疑問に思っていた。
「もしかして、ドフラミンゴんとこの」
ローはそこまで言い掛け、フイッと首を捻る。
やり方が不快過ぎて懐に入ろうとする意図を感じなかったらしい。
「ともあれ、入ってきたら肉片にするだけだな」
彼としても気持ち悪い存在は視界に入れたくないと。
「船長!多分例の女っぽいんすけど。船長に合わせろって煩くて」
「一度会ってからまだ数分も経過してねェのに…………本当にヤッてやる」
お望みとあらば。
ローは刀を肩に掛けて青筋をこめかみに浮かべた。
「あ、出てきた!」
「あ!トラファルガー・ロー!貴方、私を誰だか分かっていて弾いているの!?」
「黙れ、もう殺してやるからそこを動くな」
そこまで理解しているのならと男は刀を抜き身を光らせる。
女はそれでも態度を改めるどころかフンッと嘲りを見せた。
「貴方の能力なんてお見通しよ!どうせ死なないんでしょ!?なら、怖くなんてないわっ」
「誰が能力で斬ると言った?」
「……………………え?」