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ハートの海賊団にこっそり混じるのに成功したらどんどん気が大きくなって、ジャガイモ剥きの他にニンジンを剥くのも加えた。
コックから休憩しても良いと言われてココアを作り厨房の隅に行き身体を休める。
ローとは顔を合わせる気はないのでまだ厨房止まりだ。
それに不満なんてないし、彼を見るのが人生だと心得ているので話そうだなんて事は思わない。

「コック〜居る〜」

仲間内でもコックはコックと呼ばれ彼は「おう」と応える。
名前を呼ばれたいと言わないし、些細な違いだから訂正もしないし、コックだしと色々あるのだろう。
コックを呼んだのは船員の一人で今日は酒を買ってくるから料理に合うお酒にしたいと相談してきた。
コックはそれに分かったと言い彼の所へ赴き、残されるのは自分一人。
お喋りに普段興じているわけではないが、なんとなくもうクリオネに戻って水槽で揺蕩っていようと船長室に行く。
ローが居たら無理だが、部屋が空いているのを確認して、ローも不在なのでコソッと入る。
船長室が良く空いていると知ったのは最近だが、結構重要な事だからラッキーと思う。
何故船長室が無防備に施錠されていないのかは頭の中に欠片も不審など無い。
それがリーシャクオリティである。

(えっとー、今日はもうやり残した事はないなー?っと)

軽やかにくるんと回りクリオネに転じてポチャリと入る。
ローはそれから五分程して帰ってきたのでタイミングが良かったと踊った。
飼い主の帰還には盛大に歓迎しよう。
只泳いでいるだけなのだが。
彼は最近無言で蓋を閉めるようになった。
何だか閉め具合も強いような。
しかし、どんなに強く閉めても開いてしまうのだから関係ないが。
相手はこちらをじっくり見ると部屋でいつもの読書をし始めた。
静かな空間が自然と出来上がり欠伸でも出そうだ。
それからずっと本を読んでご飯の時になり漸く目をこちらへ向けてどういうわけか水槽を持ち出す。
珍しい、晩の席に同席させるつもりのようだ。

「あ、船長。そいつ持ってきたんすか」

「船長、そいつこっちに貸してくれません?」

「断る」

船員達の笑顔をバッサリ斬る。
そんなに家族想いだなんて感動した。

「えー、おれらも一緒に食いたいっす〜」

そんなにクリオネと食べたいのか君ら。
特殊というか何というか。
しかし、ローはまた一蹴してしまうので彼らは諦めた。
ご飯を食べ始めたローはちらりとこちらを窺いながら食べ進め、食べたと思ったらまた見るを繰り返す。
何だろう、愛情が飛び抜けて爆発したのか。
取り敢えずサービスとして飛び跳ねてみる。
すると、ピクッとして彼は固まる。
動いたと思えば凝視してきた。
あまり笑わないが、喜んでくれていると受け取った。
もう一度跳ねると今度は蓋に手を置いてギュウッと開けるのでなく閉めにかかる。
一体どうしたんだ。
そこまで疑問を得て納得の答えを導く。
時々蓋が空いているから蓋が緩いか確かめているのだと。

「せ、船長。そんなにキツく閉めたら水槽割れるんじゃ」

「壊れるか。これは頑丈なんだ」

あれ、ロー不機嫌じゃない?と感じた。

「それに、そんなに閉めたら……………」

「おい。もう何も言わない方が良いって」

隣にいた男が言いかけた男を止める。
そんなに閉めたら何か不都合があるのだろうか。
と、そこまで考えて深刻になる事も無いと考える事を止める。
それから食べ終えたローは片時も手放さないまま部屋へ戻る。
別に今までクリオネだったしこの中にいる事は苦にならない。
人間になってはしゃぎたいものも湧かないのでローと過ごせるのなら楽しいのだ。

「お前も出掛けるぞ」

そう言って彼が身支度をしようと立ち上がるのでちゃぷんと跳ねる。
跳ねた刹那、ローが首を突然こちらを向けるので驚いた。
今まで性急な動きなど戦闘の時にしかしなかったので、まるで条件反射だと思える仕草で目を細めて口元を引き締めて凝視してくる。
やがて、気が済んだのだろうーー首を元の位置に戻して着替え出す。
ローのお着替えシーンは正直パパとママ達が彼のおしめを変えているときから知っているので何とも感じない。

(わーい。ローと外に行ける)

二人きりの散歩は仲間が増えても変わらないので唯一のローを独り占め出来る時間。
彼にもいづれ伴侶となる女性が現れるのだと思えば寂しくもあり嬉しくもある。
海賊というガラ、そういうのを得るのは難しいとは分かっているが。

「行くか」

緩やかな笑みを浮かべて彼が掬い取ると視界は彼の手の中になる。
海岸沿いを宛もなく歩くロー。
サクサクと足音をさせて味わい深い気持ちにさせる。

「貴方、死の外科医トラファルガー・ローよね」

その時間を裂く存在がローの行く手を止める。
なんだ、と怪訝な気持ちで相手を見やる男はその正体に更に眉を上げた。

「何のようだフレグランス屋」

「あら!私の事を知っているの?」

「賞金額八千万。能力者。香水臭ェから近寄るな」

ローが知っていたのは新聞に載っていたかららしい。
女はその応えに不満みたいで彼にダメ出しをする。
知っていたとしてももっと妖艶に応えろと言われローの眉間のしわが不機嫌に寄せられると、流石にその女が考えなしのアホな子だと知れた。
ローは何よりも強要されることが嫌いだ。
それにしても、この子は一体何がしたいのだろうか。
ローに害を及ぼすのならば許さないけれどね。
女を見つめながら悶々と思った。