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- ナノ -
ローがまた大きくなった。
死期が無くなったのだ、喜ばしい。
彼は大泣きした後、どういう訳か何かを決意した顔で旗揚げを行った。
いや、何かの理由は既に知っていた。
コラソンに関する事だろう。
十代の子供が仲間を得た事実は嬉しくて、仲間と笑い合える日々になるかもしれないと期待した。
期待ばかりだ自分は。

「船長!」

旗揚げした時の名前はハートの海賊団。
気付きましたか皆様、海賊ですって。
いやいや、海賊って…………。

「何だ」

「島に着きますよ」

そう言って走る男は船員だ。
何号かは忘れた。
ローが立ち上がったので連れて行けとちゃぷちゃぷさせ水音で強請る。

「こら、もう歳なんだからはしゃぐな」

(気持ちは若いんだよ!まだ歳じゃないしいいい!)

憤慨だ。
確かにローより長生きしているから歳を召している思われても可笑しくない。
全くローは若いからってこちらを年寄り扱いしてさー。
はしゃぐなと言いながら連れてってくれる。
うむ、宜しい。
仲間に囲まれた彼はそれなりに幸せそうだ。

「あ、船長!」

「見えてきましたよ」

抱えられたまま外に出たローは船員達に歓迎され落ち着けと宥める。
楽しい。
島に降りると船員達が我先にと酒場を抑えに掛かる。
まるで金曜日の騒がしさ。
ローは自分のペースで酒場に入って寛ぐ。
綺麗な人が彼等にしなだれかかるのを見ていたり暇を潰すとローにも勿論寄ってくる。
あら貴方可愛いわと綺麗なお姉さんに言われ満更でも無いご様子。
そういう時は船に置いていって欲しいものだ。
生々しいのは流石にクリオネだろうと見たくないし。
しかし、ローは誘われて酒場の宿になっている場所でしけこむつもりなのかボール状の水槽を持ったまま上へ行く。
せめて見えないように布でも掛けておいて欲しい。
シャワーを浴びに行くローは水槽をベッドの縁に置くと放置する。
この人と二人っきりは勘弁しておくれ。

「なあにこれ」

「クリオネだ。触るなよ」

ローの言葉にお姉さんはふうんと別段興味なさげに言う。
彼がシャワーを浴びると女性はお酒を飲むので話しかけられないと安堵。
しかし、何を思ったかお酒の入ったコップを水槽に入れてきた。
この女イカレテル、助けてー。
クリオネにとって有害なのは考えなくても分かる。
嗚呼、水が茶色い。
ローは触るなって言ってたのに言葉の意味を理解出来ない馬鹿だったようだ。
それか、ローを軽んじているかだ。
まあ年下の青年に言われて素直に話を聞く大人もそもそも居る筈も無い。
しかし、小動物のようなクリオネちゃんに対する鬼畜所行はいくらなんでもむごたらしい。
酷すぎる死んだらどう責任を取るんだ。
それよりも客のペットを殺そうとするなんて商売人としてどうなんだろう。

(長生きしてても丈夫かは謎なんだけど)

お酒が投入されて数分経つが特に何か変わったことも無い。
しかし、女にまた変な物を入れられるのも嫌なので死んだフリをした。
女を熊に見立てて死んだフリをするのは少し楽しかった。
ローが見たら怒ってしまうのなんて考えなくても分かるだろうに。

「あら、早いのね」

色々物音がしてローが戻ってきたらしいと知る。

「!?…………てめェこいつに何した!何で茶色いんだ!ああ″!?」

「何をそんなに怒っているの?私は何もしていないわよ?」

「………………どうやら死にたいらしいな」

嘘を付いているのなんて丸分かりのシチュエーション。

「!、な、殺すっていうの!魚一匹で可笑しいんじゃない!?」

どうやら刀を抜いたらしい。
魚じゃないよクリオネさんだよ。
それに君より長生きだと思うよー。

「可笑しいのはてめェだ。おれは触るなと言ったのに良くもやってくれたな……!」

チャキッと刀の抜き身音。
パチャパチャと音をさせて蘇生しましたよアピールをする。

「!………………生きて、る」

ローが呆然とこちらを見る。
女は殺されず能力で細切れにされただけに済まされ目の前で血だらけ殺人を見なくて良かった。
彼は水を変えると海水を入れてくれる。
アルコールの匂いにあの女と怨念が込められたが、持ち直し女を踏んづけて部屋を出ると能力で自船に戻った。
自室に籠もるとリーシャの入ったアクアボールを抱えて黙ったまま堪える様にすまなかったと謝った。
彼が謝る事でもないと慰める。
パチャパチャするとボール越しに撫でられた。直で触っても良いのに。
そんな事があってかローは酒場に行くときは自室に置いて去る様になった。
暇になるから何度も飛ぶ練習をして水槽の入り口を外して這いながら部屋を彷徨うろつ く。
両手をペンギンみたいにすればズリズリとしながらでも徘徊できた。
いけないことをやっているのは自覚しているがその背徳感に気分が最高潮。
ズリズリしていると振動が伝わってくる。
ヤバいローがご帰宅だ。
急いで水槽に戻るが蓋がどうにもならない。
諦めよう。
部屋に入ってきたローは青年から大人になりかけていた。

「………………蓋が空いてる?」

ギクッとしたが何気なく泳ぎ知らないフリ。
今日は疑われる事無く蓋は無事閉められた。