×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
いや、いつも夜中でも開いているのかもしれないが、気にする前に今は寝る事だ。
だって、眠くないのに脳はお疲れなのである。
部屋へ入ると薬品の匂いが鼻を通り、鼻腔に広がりローの匂いだと微かに頬を緩ませた。
ベッドは月の光が届かないので手探りで何とか探り当て横になる。
ランタンを持ち歩くというのも大切だというのが身に染みた。



ハッと目を開けると朝方になっておりいつの間に寝たのだろうと苦笑した。
気付かないというのは不思議な感じだ。

「早く移動しなきゃ」

誰か来てしまい質問されるのを危惧し、部屋から退室。
誰も居ない事を確認してローの部屋の前へ行くと中から声もしないので女は出されたのか、と部屋をチェック。
良かった、開いてる、と扉をゆっくり開けてコロコロとした水槽が置いてある事にも安堵した。
あの女が壊しているかもしれないという前提もあって不安に思っていたのだ。
どうやらローの言いつけを守り大人しくしていたらしい。
良かった、と水槽に戻りチャプンと水の感覚の久し振りさにただいまただいまと興奮。

ーーギュポン

聞きなれた大きな音に慌てて上を見れば蓋が閉められていた。
ローの特徴的な刺青の手が見えていつの間に部屋に居たのだろうと冷や汗をかいた。
普通に閉めたということは、見られていないのだろう。
真剣にこの水槽を眺めているローにアピールするためにわさわさと手を振る。
傍から見ていたら泳いでいるようにしか見えないだろうけれど。

「食べに行くぞ」

そう言えばまだ食べていない。
ローがクリオネ用の餌を蓋を取って、くれた。
手先にあるしお腹がペコペコだったので勢いあまりローの手のひらに乗ってしまう。
跳躍はいつの間にかこんなに跳べるようになっていた。
日々の練習って大切だ。

「!、おい………駄目だろ」

ぴちぴちと手をヒラヒラさせて、ローにアピールする。

「ほら、中に入れ」

ローはソフトに優しく優しくふんわりと水の中へ入れてくれた。
やっぱり初めて手に本格的に乗ったからかな。
水に入れられるた蓋を閉められて食堂へ向かう。

「あのイカレた女は今の所地下へ捕らえさせているからもう姿も現さないだろうな」

彼は独り言をぽつりと言う。
そっか、もう見ることはないようで安心だ。
ローが嫌な気持ちにならないのなら、嬉しい。
地下に居るのなら海桜石をかけているのだろう。
能力者なのだから、当然の処置だ。
リーシャもあの煙に撒かれるような厄介な能力はローを困らせるし、有用すれば力になりうるのを理解出来たので、彼が傍に置くのか置かないのか判断は気になった。
彼は船長だ。
船員達にとって不利な人材を置いておいたままにしておくとは思えない。
そう願おう。
食堂へ行くと互いに労り押し掛け女について船員達が話しているのが聞こえた。
全く、ローの部屋で寝られなくなるしで迷惑この上ない日であったと言える。
地下から出る事は叶わないから、次の島まで待てば良い。
船員の一人が女について愚痴るのが聞こえる。

「にしても、あの女、本当はヤバかったよなァ」

「あァ、四六時中船長の事をペラペラ話してて、引いた」

どうやらローにした初対面で述べていた事を船員達が居る前で言ったのだという。
ローの事を知り尽くしているだの、私はローに会うために異世界からやってきたのだとか。
同じ事を自分が言ったなのなら彼らはまた頭の可笑しな女だと笑うのだろうか。
これは言えないと決定的な確執を感じ取ってしまう。
ならば、誰にもバレぬように過ごそうと再度決めるに十分な材料。
彼らとその船長に不届きものなる女という目で見られるのは辛い。
もしもバレたら最悪死ぬのではないかと悟る。
しかし、ローをずっと騙していたと責められても仕方がないのだ。
甘んじて受けるしかあるまい。
もしかしたら慈悲でも貰えるかもしれなしね。

「あーあ、早く陸に着かねェかなァ。一緒の船に乗ってるってだけで鳥肌もんだわ」

うんうんと頷き合う船員達。
リーシャもまた絡まれたくないので同じ気持ちで内心同意する。
女と知っている女に構われたら今度こそローとて流石に疑心を抱くだろう。
何年も乗っている船員に対して疑えるのは船長足る特権と言えるし。
ローが黒と言えば黒になるのだから一度疑われれば人間になるのを止めてクリオネだけの生活に絞るしかあるまい。
船員達の騒動から離れていつもの場所でクリオネに戻りぽちゃんと水の中へ入る。
暫くしてローが部屋へ戻ってきて蓋を閉めると息を吐き部屋で本を読み出した。
最近、更に蓋を閉める動作に磨きがかかり、早くなった。
オチオチしていられないと自分も鼻息が荒くなる。
ローは頑張り屋さんだから、少しでもリラックスしてもらえるようにクリオネらしく泳いでセラピー代わりに癒してあげるのだ。

「飯はあと少しだ、我慢しろよ」

どうやら間違えられている。
そうじゃないよ、とパタパタするものの、通じるわけもなく見逃された。
まぁ人間みたいに察せられる動きじゃないから仕方ない結果。
諦めてパタパタしまくるのを止めた。
優雅に泳いでこそ我はクリオネなのだ。



数日が経過して、陸に着いた。
漸く例の悪魔の実を食した女を降ろせると皆喜んでいる。
リーシャも安堵を感じた。
あの女はリーシャを女だと断定しているから危険な人だと理解している。
一つでも疑われてしまうと均衡が崩れ兼ねない。
ローが女の言葉を鵜呑みにしなくて良かった。
女は速やかに町へ下ろされた。
最後までローに寄せてくれと懇願したらしい。
しかし、ローも許さなかった。
又聞きした事だが、ローの大切な私物を傷つけた事が敗因だとか。
何か傷つけたのかと思い出してみるものの、それらしい私物を壊したという事は聞いたことがない。