×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
キッチン部屋から出てからローの自室前に来るまでの記憶が抜け落ちている。
動揺して頭が真っ白になっているのも加えてローの耳に囁いた台詞がずーっと頭の中で繰り返されているせい。
どういう意味なのか、やはり男が。
と思っていると食べ物を届ける事に気付き持って行くことにした。
今は考えるべきではなさそうだ。
というか今でも船員が密航者捕獲の為に見回っているのにどこに隠れているのだろう。
何かの能力者という線もある。

「面倒………」

もう別に持っていかなくても良いんじゃないのかと思ってしまう。
どんどん持って行くのが億劫になる。
ぶっちゃけても良いような。
そもそも脅しに屈しなければこの計画は破綻してしまうので彼女の命運はリーシャに握られている。

「そもそもこの船に乗っているのはローを好きな人達ばっかりってのをあの子は分かってないんだよね」

呆れながら向かうと出会ったところへ。
辺りを見回すと音もなく現れる女。

「能力者?」

「やっぱり分かっちゃう?悪魔の実、食べちゃったの!ローに会いたいからバカな男海賊から奪ったのよ〜。男ってチョロいんだ!」

(何かフラグが立ったようなー?)

主に報復される方向で。
しかも悪魔の実を食べるだなんて。

「うん。ローに好かれたくて悪魔の実食べて強くなったの」

「何の実?」

「ユゲユゲの実。湯気になるの。凄くない!?」

興奮した様子で語られて段々うんざり。
けれど、重要な事を言われるかもしれないから聞き逃してしまわないように気をつけて聞き役に徹する。
それにしてもローを呼び捨てにするなんて特殊な子だ。
彼は呼び捨てにされるのは気にならないが馴れ馴れしいのが好きではない。
さて、仮にローと会って呼び捨てにしたら恐らく眉間にシワを寄せて不機嫌になるだろう。

「凄い。どんな事出来る?」

赤子に聞く様に丁寧に聞く。
勝手に気分を上げてペラペラ話してくれるかなって期待しているのだ。
女とは本来女狐と称される事があるからして頭が回るし相手を値踏みし男よりも更に未来を考えて物を言う人だっているが、この子はそれに当てはまらないな、と瞬時に察せた。

「あはは、やっぱ気になるう?だよねっ、なんせ悪魔の実だもん」

馬鹿だ馬鹿だと思っていたが上げて上げていけば上手くいくだろう。

「何が出来るか教えてあげる。どーせローに認めてもらえるように沢山練習したし皆に御披露目するんだろーしっ」

駄目だ、馬鹿過ぎて。

「何からにしよっかな〜」

音符が付きそうな程楽しげにしている。
口がパカーンとあいてしまいそうになる。
必死に口を閉じて我慢。

「湯気になって姿をくらませて見えなくするのは当然。湯気を発生させて人を蒸らすの!戦えるのよ。ふふーん、凄いわよね」

「嗚呼」

(聞くのしんどくなってきた)

こんな女に使われるのが超億劫。
しかし、今は我慢。

「ローに手っ取り早く売り込むには寝込みを襲うに限るわ」

(バカだ。分かってたけどバカが居る!)

死ぬかもしれない確率が高い。
仮に能力を披露出来たとして、ローが受け入れるかは別問題なのを想像してないようだ。
バカ過ぎて最早自殺したい人の最後のお遊びにしか思えない。
ローは只の町人でも好青年でもなく裏社会に足をズボッと突っ込んでいる男だ。
そんな見え透いた媚びに引っかかるとは思えないし、やはり死亡フラグがバイブレーション付きにやってくる。
え、何を言っているのか分からないって?自分まで混乱して意味の分からない比喩を口走っているらしい。
止めた方が良いのか止めずに痛い目を見て学ばせたら良いのか悩む。
ええい、こうなったらローの貞操は守る。
恐らくこの子はこちらを味方として数えているだろうし、その油断を手に取り転ばせよう。
ローは何時に寝るのだと聞いてきたから適当に四時と答えたら嬉々として分かった!と言うので溜め息を殺し馬鹿だと罵り思った。
だって、普通に考えてそんな時間まで起きられるわけもない。
起きていられたとしても体内時計が寝ている筈の時間まで起きていても、頭がぼんやりしてしまう。
この子が規則正しくない時間まで意識を起こしていられるとは思えない。
そして、これはクリオネだからこそ知り得るのだが、ローは本を毎日朝方まで読み徹夜する。
本人にとっては慣れた習慣。
つまり、襲っても返り討ちにあう。
この子に一パーセントすら勝算がない上で提案した。
勝手にされるよりも手の平で踊られた方がマシ。

「準備は良い?」

ということであれから時間が経過し今は夜中の四時。
本当に四時まで起きていたが、かなーり襲撃者は眠そうである。
眠いのなら止めておけば良いのに。
保険としてシャチに直筆で紙に書いて気配を消してもらい死角に居てもらっている。
女が能力者というのをちゃんと言ってあるのでシャチが攻撃しても無効化されるのであくまで見ているだけに留めてもらう。

「せーの!」

小声にしてはデカい。
やはり色々抜けている。

ーーパタッ

扉をゆっくり開けるのかと思いきや、そんな事は無く、普通に開けた。

「ロー!私の話を聞いて………………居ない!?え、何で?」

「……………シャワー?」

ローが居ないのはリーシャも知らなかった。
首を傾げていると扉を開いた状態の部屋の立ち位置から後ろに突如引かれて、バタムと扉が閉まる光景だけが見えた。

「え!な、何!?ちょっと開けなさい!騙したわね!」

いや、騙してないし閉めてもない。
では誰だろうと思えば検討が付くのは教えていたシャチだろう、と後ろを向く。
しかし、ソコに居たのは彼でなく部屋の本来の主であったのだ。
驚きと共に絶句していると扉のドカドカという音と女の声が聞こえる。

「出しなさーい!何やってんのよぉ!?」

煩いな、ドアが傷ついたらどうするんだ。
それに、部屋を荒らされたらどうしようと心配しているとこちらを寄せて部屋から離れさせた人が口を開く。

「良く見つけたな」

「!、いえ」

二回目と言って良い程こんなに近くで声が聞こえて鼓動がドクンドクンと音を立てる。
良いボイスを持っているその男に褒められて嬉しくなった。
ジッとしていると彼は扉を見てから相手に話し掛ける。
おれに何のようだ、え、ロー?なんでローがそっちに?というやりとりの中でローのこめかみに青筋が立つ。
怒気を込めてローは何呼び捨てしてんだああん?という気迫で舌打ち。