06
隣の部屋のインターホンを押せばゆっくりと扉が開きのっそりとけだるげに出てきた隣人。
「朝っぱらからなんだ」
「朝ご飯一緒に食べない?」
「どこでだ」
「私の部屋で。もう用意できてるし」
その様子じゃあ朝ご飯まだでしょ?と尋ねれば目を見開いたローがいて、密かに笑った。私の家に上がったローを椅子に座らせ、麦茶を出せば「緑茶出せ」と我が儘発言をかましてきたため、腹いせに青汁をだしてやった。
「青汁ってなんでこんなもんあるんだよ」
「私健康食にハマってるから」
どや顔で説明すれば、小さな声でローが麦茶でいいと言うのを聞いて、私の麦茶と交換してあげた。ふふん、まいったか。勝ち誇った顔をしていればローはムッと不機嫌になり、朝食のサケのムニエルに手を伸ばした。
「美味い……」
「でしょ」
一度手作り弁当を貰ったことがあるローは、明らかに上達した料理の味に舌鼓を打ったのだった。
***
「休みって最高だよねー」
「だな。でも、くつろぎ過ぎだろ」
「え〜?そんなことないよ〜」
ダラダラと寝転ぶリーシャにローは呆れたように、こちらを見る。
「そう言えば、彼氏は放っておいていいのか?」
「ほぇ?彼氏〜?」
「いるんだろ」
突拍子もないローの言葉に呆気に取られるリーシャ。
何を言っているのか、さっぱりわからない。
「いないよ」
「……は?」
「彼氏、いないけど?」
目をまんまるに見開いた、レアなローに笑いそうになるが我慢した。
一体、どんな勘違いをしていたのか。
ローはそこで、やっと表情を歪めた。
「この前、いるって言ってたじゃねェか」
「え、あれは……昔の話しとして言っただけだし」
「はぁ!?」
「ちょ、いきなりなんなの。大声出さないでよ」
「これが出せないでいられるかっ!」
息を荒げ、リーシャに迫るロー。
「わかった。わかったってば……ローはきっと、勘違いしてたんでしょ?」
「……当たり前だ」
バツが悪い顔つきになるローに、リーシャは苦笑する。
今までずっと、勘違いをしていたのだろう。
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