02
ものすごく強引に部屋へ招かれたリーシャ。
「素敵なお部屋ですなぁ」
「おっさんかよ。当たり前だ。まだ荷物入れてねェからな」
「私もだよ」
ローはリーシャを椅子に座らせると、ソーダを持ってきた。
「わっ、ローおもてなしなんて知ってたんだね」
「バラすぞ」
「いやん、冗談だよー」
相変わらずだな、と笑うロー。
ローとは中学が同じだったが、高校が別々になり、今日まで全く会うことはなかったのだ。
「なつかしーなー」
「だな。あれからなんかあったのか?」
「特にないよ、しいてあるんなら彼氏かな」
「――彼氏?妄想のか?」
「ちっがーう!高二の時にね」
「へェー」
なぜかローは少し悲しそうに見た。
「どうしたの?」
「別に」
「???」
様子がおかしいことにリーシャは首を傾げる。
ただ高校二年の時に彼氏ができたが、それも一時期で別れたという内容なのだが。
説明不足でローが勘違いしているとは知らないリーシャ。
ローが内心掻き乱している内に、リーシャはソーダを飲んだ。
「じゃあ帰るね」
「あァ、またな」
自分の部屋へ帰っていくリーシャを見送ったローが扉の前で拳を握っていたことをリーシャは知らない。
***
「だ、大学っ!」
今日から始まる大学。
入学式という懐かしい行事にわくわくどきどきだ。
(そういえばローにどこの大学なのか聞くの忘れてた……)
と思ったが、また帰って聞けばいいかと思い直す。
なんせ隣人。
まさかの隣人。
リーシャが考えていると、ふいに向こう側が騒がしくなった。
「なんだろー……?」
好奇心旺盛なリーシャはそこへ向かう。足が勝手に動くのだからしかたない。
めちゃくちゃな言い訳をしながら黄色い声を上げている女子を見つけ、掻き分ける。
「どれどれ――あれ?」
目当てのものを見つけようと目を動かすと、そこには見覚えのある帽子。
「どっかで、見たよーな」
思考を巡らせる。
「どけ。これじゃあ動けねェだろが」
「まァまァ船長。相手は華の女子大生ですよ?」
「なら勝手に漁ってろシャチ」
(有名人なのかな?)
リーシャの目にはモコモコな帽子の他に、キャスケット帽子とペンギンと英語でロゴが書いてある帽子のみが見えた。
(帽子率高いや……)
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