08
あの女達、という言葉にリーシャはすぐに思いついた。
「あの人達……!」
人の個人情報をペラペラと。
リーシャは微かな怒りに顔が歪む。
「会った事はあんのか?」
「ないですよ」
「そうか」
聞いてきたにしてはやけにあっさりと引いたロー。
リーシャはえ?と呆気に取られる。
もっと何かしら聞いてくると思っていたのに。
そんな事を思いながらローを見ていると、不意に眼が合った。
「なんだ」
「いえ、もういいんですか?ルフィについてとか……」
「知らないなら仕方ないだろ」
「まぁ、そうですけど……」
「それよりも次はお前だ」
「え?」
ローは先程の麦藁については既に頭にはないらしく、リーシャにその隈がある目を向けてきた。
「お前みたいな生真面目な奴は他に仕事があるんじゃねェのか?」
「生真面目……仕事はかなりいい条件ですから」
ローの意味ありげな言葉にリーシャは呆れながらも答える。
ルーキーであるローに何故そんなことを聞かれるのかと疑問に思いながら。
「条件はいい、ねェ」
「少なくとも店長はいい人ですし。私は恩返しする為に働いているんです」
「恩返し?」
彼が反応する部分に頷く。
するとローは顎に手をかけリーシャをジッと見つめる。
その視線に身体が反射的にのけ反る。
(海賊なんだよね、この人……)
海の荒くれ者というにはかなり綺麗な顔立ちをしている男。
モデルをやったほうが遥かに安全な生活が送れるだろうに、とローの体型すらも羨ましく感じる。
「あの、帰っていいですか……?」
「ダメだ」
「仕事がまだあるんですけど……」
「ダメだ」
「………」
話が通じないことに内心ため息をつくリーシャ。
海賊だからという理由もあるが、なんとなくいたほうがいいだろうと動かないでいた。
でも早く職場へ帰りたい。
「いつだったら帰っていいんでしょうか……?」
「いつだろうな」
はぐらかすように笑うローにますます眉を寄せる。
理不尽で、でも逆らえない。
ずるいと感じ、やはりここは従ったほうが得策だとも思った。
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