07
茫然と意味を考えるリーシャを余所にローはそのまま移動する。
「ちょ!やめて離して!」
「金だ」
「は、はい!」
騒ぐリーシャをものともせず、呆気に取られている店の男はローからお金を受けとる。
「や!」
「少しは静かにしたらどうだ」
「この状況で無理!」
ぎゃぁぎゃぁと抵抗をする私を半ば引きずるような形でローはホテルの一室に連れ込む。
かと思えばお風呂に向かった。
「っ!」
「浴びろ。そのままだと風邪を引く」
「……はい?」
暴れるのを忘れローの言葉に呆然となるリーシャ。
「脱がして欲しいのか?」
「いえ結構です!」
ローが着ているウエイトレスの制服を見ると、慌てて首を振る。
それを見たローは可笑しそうに笑うと脱衣所から出ていった。
何となしに見送るとズルズルと座り込む。
「し、死ぬかと思った……」
相手は本の中の住人ではあるが、実態はあるのだ。
腕を捕まれた感触もちゃんと覚えている。
自身にとっては普通の人間と変わらない。
(シャワー、浴びろってことだよ、ね?)
ここまでする相手の意図は全くわからない。
しかし、ここはその好意に甘えた方がいいかもしれないとリーシャは服を脱ぎ始めた。
「す、すいま、せん……」
ガチャリとシャワー室の扉を開けると、ベッドやソファがある一室に繋がっていた。
「……来い」
無表情で言われ、ゆっくりとローがいるソファへと向かう。
「安心しろ。別にどうにかしようなんて考えてねェよ」
「本当、ですか……?」
疑いの眼差しを向ける。
その視線にローはフッと口元を上げた。
「どうにかされたいのか?」
からかうような口調でリーシャを見る。
リーシャは慌てて、とんでもないと首を振った。
「少し話がしたいだけだ」
「話……?」
何かしただろうか?
リーシャはローが座るソファへと腰を下ろす。
「お前、麦藁屋が好きらしいな?」
「麦藁、屋……ってルフィとかゾロの事ですか?一体誰がそんなこと……」
「あの店の女達だ」
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