06
しばらく砂浜で過ごしているとポツポツと雨粒が降ってきた。
「マークの上に石を積んだから問題はねェが……」
雨宿りをする場所がない。
チッと苛立ちながらどうするかと考える。
「来て下さい」
最初の時のように告げるとリーシャは俺の手を掴み少し早めに足を動かす。
「人間は雨に濡れるのは好まないと聞きました」
「人によるがな」
歩くリーシャに俺も手を引かれつつ付いて行く。
少しすると森の奥に洞窟が見えた。
(この森に住んでんのか?)
迷うことなく辿り着いた彼女の足に、なんとなくそう感じた。
「ここです。火はあそこで……」
ふと視線を向けるとそこには火を焼べれるように木の枝が重なり合っていた。
使われた様子はなくまだ新しかった。
「わかった。わざわざすまねェな」
その場所へ行き、早速火を起こし始める。
「よし……付いたな」
海賊という職業柄、こんなことは朝飯前。
作業が済みリーシャを見ると彼女は火からずっと離れた場所に立っていた。
「どうした。来いよ」
しかし首を横に降り拒否の意を示す。
(もしかして……)
「火が怖いのか?」
魚の種族だからかと思いながら尋ねると「少しだけ」と返事が返ってきた。
「大丈夫だ。保障してやる」
安心させるように彼女をこちら側に来させゆっくりと腰を下ろさせる。
「……温かい」
「フフ、だろ?」
安心したのか柔らかな笑みを浮かべるリーシャ。
その表情にこっちも口元が上がるのを感じた。
(その笑みは人を優しくする)
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