04
女に付いて行けば、見えてきたのは大きな果樹。
「……お腹空きましたか?」
「あァ。あれを食べんのか?」
俺の言葉にこくりと頷く。
すると女が木に登ろうとするから俺は慌てて止めに入る。
いくらなんでも……。
「俺が行くから降りろ。お前はここにいとけ」
ヤワな女に任せるには大き過ぎる木に俺は登り始める。
(本当に何なんだ……)
今みたいに無茶なことをする女に目が離せないと感じ、深くため息をはく。
「取れたぞ。受け取れ」
木の上で果樹の実をもぎ取れば女に向かって二つ投げつける。
「………」
それすらも無言で受け取るやつ。
表情の表現に乏しいのか?
さすがにここまで反応が薄いと医者として気になってくる。
「っと……次に行く場所はあんのか?」
「ありません。食べるだけです」
その言葉に俺は「そうか」と言い、女と同じようにそのまま地面に腰を落とした。
「お前はなんで人間の足を持っているんだ?」
「人間と人魚の血が入っているからです」
しばらく実を食べて、前から気になっていたことを尋ねれば躊躇する素振りもなく話す女。
(混雑種か……)
人魚はある程度歳をとらなければ二股にはならないと聞いたことがあった。
しかし、こんなにも若い人魚が人間の足を持っていることが何故かわかり俺はなるほど、と改めて女を見る。
「そういやァ名前を聞いてなかったな。俺はトラファルガー・ローだ。助けくれて感謝する」
名前を言えば彼女は「ロー?」と呼ぶ。
こいつに名前を呼ばれるのも悪くねェな。
まるで子守唄を聞かされているような声色。
「私はリーシャ」
「リーシャ、よろしくな」
フッと笑い手を差し出せばリーシャもふわりと微笑んで俺の手にその綺麗な手を合わせた。
(守りたくなる気持ち)
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