02
普段ぽやぽやとしているのに指摘が的確で何も言えないロー。
「お前の言う意地悪は他の奴の意地悪とは全く違ェんだよ……わかるか?」
「わからない」
「………」
(どうしたらいいんだ……)
ローは降参したくなった。
小悪魔みたいな少女。
たが、見た目も中身も正真正銘、無垢なのだ。
人魚でありながら疑うことを知らないという時点で納得せざるおえないが。
「それよりリーシャ。果物が欲しいんだったな」
「うん」
そんな風に悩むローを憐れに思ったのか、ペンギンが助け舟を出す。
果物という単語にピクッと反応を示すリーシャ。
それにフォロー役はあちら側を指で指し示す。
「あそこは八百屋みたいだから売ってるぞ」
「果物?」
「あァ。ほら、来てみろ」
心なしか浮足立っているようなリーシャに催促する。
あまり感情を面に出さない少女はペンギンにヒヨコのように着いていく。
ローは、いつから魚類から鳥類になったんだと内心思う。
「ロー」
「なんだ?」
「いかないの?」
「……行く」
自ら望んでいた問い掛けに迷うはずがなかった。
手を弱い力で引かれ、思わず破顔してしまう。
「ロー、これはなぁに?真っ赤な赤い実」
「これは、林檎だ。食べてみるか?」
リーシャがコクンと頷くのを見ながらローは林檎を八百屋の店主へと手渡して清算した。
「上手いか?」
「うん。しゃりしゃりして、甘くて美味しい……」
リーシャは幸せそうに林檎をかじる。
「ローも食べて」
「………」
リーシャが、かじりかけの林檎を純粋な瞳のままローの唇へと寄せる。
彼女の好意を無下にすることも憚(はばか)られ、林檎を一口かじった。
「美味しい?ロー」
「あァ、甘ェな」
林檎と少女を見比べて呟いた。
魔法の甘さで囚われる午後
Title/hmr
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