09
「いや〜!無事で良かったです船長!」
「本当によく無事でしたね」
シャチとペンギンが船へ戻った俺に声を掛ける。
「助けてもらったからな」
「え、誰にですか?」
シャチは不思議そうに首を傾げる。
当たり前か。なんせ場所が場所なだけにだろう。
「……ところでどうやってここへ辿り着けたんだ」
そう聞くとペンギンが困惑しきった声音で説明しだす。
「船長がいなくなって数時間はずっと周りの海を探していたんですが、正直焦っていたんです。そんな時、船の周りに魚が――」
「あれマジで凄かったよな!」
シャチが説明を遮ってきたことにペンギンが「黙っとけ」と釘を刺す。
「それで、魚が突然俺達に向かって道を教えるように目印になったんです」
「そういうことか……」
俺はやっとリーシャの言っていた意味がわかった。
(船がこの島に来れるようにしたと言っていたな)
「もしかしてその事と船長を助けた人物と何か関係あるんですか?」
さすが察っしがいいペンギンだ。
接点にこうも早く気づくとは。
「……それを言う必要はねェだろ」
詮索されることを避けようと部屋へ戻ろうと自室に向かう。
「じゃあ――未練はないんですか」
ペンギンの言葉にピクリと反応し足を止める。
「それはどういう意味だ?」
「言わなくても貴方ならわかっているでしょう?」
「………」
最後に何も言えなくなったのは俺の方だった。
そんなことは言わなくてもわかっている。
でもリーシャは船に乗りたくないと言ったんだ。
「俺達は海賊です。そうでしょ?船長」
どこまで理解しているのかこいつは。
船長が船員に背中を押されるなんてな。
「フフ……そうだ俺達は海賊だ」
覚悟やこれからもどんなことでも背負うと決めた。
無防備なあいつを放っておけないからな。
(そして海へ再び)
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