ガラスの靴は脱いだのよ | ナノ
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夏休みになったらしたい事があった。
プールという水と触れ合える所へ行く事だ。
女友達へ連絡しようと携帯からメアドのページを開く。
それから三秒後、一時固まり震え出す。

「私…………女友達いなーい!」

と、言うわけでローに女友達を紹介してくれと頼む事にした。
持つべき物は女受けが良い男子だ。
ちょっとメールしてからファミリーレストランで待ち合わせ。
時間丁度にやってきたローと挨拶をしてから飲み物を頼む。
それから本題の友達紹介してよ、とそれに至るまでの考えを彼に伝える。
相手は話しを聞き終えると至極自然な事を言った。

「今日知り合いになったとしても夏休みが終わるまでにプールに行く程友達になれるとは思えねェんだが」

と、言われたので地団駄を踏んでムーっとなる。
それはそうだが。
その時、頭上に閃きが降りた。

「トラファルガーくん。お願いがあるんだよ」

「何だ」

嫌な予感を本能的に感じたのか、後ろへ下がるロー。
後ろはソファだから下がっても意味はない。
下がったのは心もだろう。

「トラファルガーちゃんに今すぐなって」

「ふざけんな」

一蹴されたのでふてくされるリーシャ。
ケチやらちょっとくらい……とボヤく。
ローは頭に手を当てて呆れた声音を発する。

「ちょっとなったって、女になれるわけェだろ」

当然な事を述べるローにまたぶーたれる。
それでも諦めきれない。
直ぐ近くにプールがあるのに。

「トラファルガーちゃん。私は今すぐプールに行きたいんだよ」

懇願してみる。
想いよ、伝われ。

「まだ言うか」

青筋を浮かべる友。
しかし、次に聞いてきたのは恐らく純粋な質問からくる問いかけだった。

「海じゃねェのは何でだ?」

「えっ……海って、海水……でしょ?」

「それが何だ」

正直に言ってもローには可笑しく聞こえたのだろう。
怪訝な表情を浮かべて続きを足してくる。

「私、溺れるかもしれない」

「おいおい……逆だろ。海には塩が含まれているから身体は浮きやすい」

「へー……ってそうじゃない……そういう問題はどうでもよくて」

塩水は浮きやすいのか、と知ってからいやいや、と首を振る。
何と説明すればいいのか。
デリケートな事だから説明するのは難しい。

「カナヅチなのか?」

「流石にもう泳げるかな、私……」

聞かれた事に改めて考える。
思わず俯いてしまう。

「もう大人に近いんだから当然泳げるだろ……もし無理ならおれが……女が良かったんだったな、そういえば」

ローが難しい顔をして腕を組む。
そこまで考えてもらって悪い気はしない。

「うんとねー。本当は女の子の身体を触ってきゃ!とかしたかったんだけど……トラファルガーくんが女の子役をしてくれるなら……」

ちょっと期待して相手の顔色を窺う。

「おれに女物の水着を着ろと?公共わいせつ罪で捕まる」

確かにバレる可能性が高いがローは割と顔が整っているので案外イケるかもしれない。

「そこは……見た目は男だけど実は女の子……ボーイッシュな女子で」

「まかり通るか!」












前に不良+ナンパ生徒に絡まれて以来、助けてくれたテンプレヒーローの男、ユースタス・キッドとは、メアドを交換してメールのやり取りをするメル友と成っていた。
先程のプールの件を話し終えてから、文字を打って送信してジュースを飲む。

「最近メールするのが多いな」

「うん。あれ?言ってなかった?」

ナンパされて助けられた事はローにも話した。
男の名前を聞いたローはとても良い笑顔で(邪悪)知り合いだと言っていた筈。

「ユースタスくんとメールしてるんだけど」

「…………………………あ?」

その返事に要した脳内の会議はさぞ荒れたのだろう。

「待て、何でユースタス屋とメールしてんだ」

「助けてもらってメアド交換してそれから続いてるよ?」

「……なんでよりに寄ってアイツ何だ…………リーシャ、LIEは」

「あー……私LIEのアプリ取ってないから」

本当はこちらの読んだ事が分かるシステムが煩わしいから取らないだけなのだが。
前世の記憶が戻ったと同時に消去した。

「ちっ……じゃあ夜に電話しないか俺と」

何だか張り合ってるような気がしなくもない。

「おれはお前の彼氏だろ」

「別に拘(こだわ)らなくても……」

「何時が良い?」

「……うーん。じゃあ……」

ローがしないという選択肢を取らないようなので話しを続けるしかない。

「じゃあその時間から掛ける」

「三回電話して出なくて、かけ直しがなかったら寝落ちしてるって事で」

「分かった」

了承するとローは満足そうにジュースを飲み干した。


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