ガラスの靴は脱いだのよ | ナノ
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テストについて色々としていた。
結果としては赤点は免れた。
高校に入学して初の快挙だった。
報告は以上だ。

「お前にしては頑張った」

「うん。今年の夏休みは補修無しの休みになるから……まあラッキーちゃあラッキーなんだけど……ははは。はあ」

付け焼き刃にしてはよく勉強した方だ。
ローが褒めてくれるなんて事も意外だった。
ローは人を褒めないで「無能」と罵る人だと勝手に思っていたので。
ごめん、と心の中で和解する。
それに、彼は学年で上位だ。
よくペーペーのリーシャが告白してオッケーをくれたものだと今更ながら思う。
ロー程の秀才ならばもっとステータスが豊富な子を選んで付き合えるだろう。
どよーんと落ち込んでいるとローに帰ろうと足されてウダウダと立ち上がる。

「あ、それ」

下駄箱まで来た時、ローの下駄箱に手紙があった。
ローとは同じクラスだが下駄箱は背中を向ける位置で相手の下駄箱の中身が見える。
男女別である。
分ける必要が何故あったのかと言う七不思議の一つ、らしい。
別にロッカー式でも無いので見ようと思えば皆の下駄箱が見えるが。
ローはそれを慣れた動作で放置。
靴だけ取り出して何もなかった様に靴を履き出す。

「テストが終わったらお前に来て欲しいと考えていたんだが」

お手紙の件は出さない方が良さそうだ。

「来て欲しい?何処に?」

「おれの……家だ」

またまた苦渋の顔をするローに驚く。
ローはとある事情により恋愛がやりにくいと言っていて、その理由が家の特殊さにあると言っていた。
なので、てっきり家に来られるのは嫌なのだと思っていたのだが、その家に招いてくれるらしい。
私で良ければ、と口にするとローはホッとしたようで、でも苦しそうな顔でこっちだ、と案内し出す。
何が待っているのかと微かにドキドキする。

「トラファルガーくんの家にお呼ばれ。恋愛出来ない止ん事無きお家の実態を遂に私は知るのかー」

「恋愛出来ないわけじゃねェ……相手が恋愛出来なくなるっつうか」

ゴニョゴニョ言い出すローを尻目にあれやこれやと想像する。

「女性だらけのご家族とか」

全員が女の子というローの家族構成を考えてみた。
それも女性の権力が強くてローはパシられているとか。

「そんな家族だったらとっくに県外の高校におれは居る」

では、県外に行く程ではないという事かと思った。
ローが先程から濁してばかりで何も言ってくれない。
暫く歩いてまだかかるのかな、と思い始めた時、ローが不意に止まる。
此処だ、と言うローに周りを見渡して首を傾げる。
一軒家はない。

「だからだな……今見えている塀(へい)も含めて敷地だ」

十歩程足を進めた所に玄関があった。
これにはかなり驚いた。
ローが嫌そうに恋愛出来ないとボヤいていたから余程荒れている家庭なんだろうと思っていたが、まさかこっち方面でこうだとは。

「つまり、トラファルガーくんの家が特殊過ぎて普通の子では君と付き合えない理由がこれって事……何だよね?」

確認するとローはコクリと頷いた。

「家が財閥なんて知れたら付き合う付き合わないの問題じゃなくなる」

「ま、この現代に生まれた子達には荷が重いか」

ローには聞こえないように呟くとローの苦労が眼に浮かぶ。
因みに、ローがまともな恋愛を諦めているのは過去にそれなりの事があったからだと言われた。
トラウマならば仕方ないというか。

「で?私はこれからこの中に入ればいいの?」

何故建物が和風なのかと訪ねるとドフィが和が好きで洋風な豪邸はここの土地では浮くらしいという理由だそうだ。
こんな家だが、世界で展開される会社を担い取り纏めているまぁ凄い奴だ、というロー談。
段々分からなくなってきた。
会社は先代から継げられていて、それをドフィも継いだのだと言われた。
ローがドフィドフィと言うのが少しずつ可愛く聞こえてくる。
にやにやとにやけそうな顔を隠して玄関を開くとメイドがずらりと並んでいた。

「和装にメイド?」

完璧に混合されている。

「深くツッコんでたらこれから疲れるぞ」

ローも同じ事を思った事があるのか訳知り顔だ。
メイドに頭を下げられて家に入っていくという初体験をしながらついに中へ入る。
というか玄関まで少し道のりが長い。

「お邪魔します」

家へ訪問する時と変わらず口にするとメイドの奥から少し違った感じの女の子が現れた。

「ロー!……って、あら……お客さん?………………え!?お客さんなの!?」

訪問しただけでえらく驚かれている。
驚愕に縁取られた顔をする女性にローは「リーシャだ」を紹介した。
それに合わせてペコリと頭を下げる。

「あんたのこれ?これなの!?」

と小指を一本立てて『恋人』の手を作る。
ローが答える前に彼女は「大変!」「赤飯炊かなきゃなの?……買い物しなきゃ!」と早とちり満載の台詞を言う。
ちょっとオーバーし過ぎやしないか、と見ているとローが「静かにしろ」と低い声音で鎮める。

「ベビー5……こいつは客人だ。間違えるな……後おれの部屋に通す」

「ま、まあ!?ローが!?ローがそんな事言うなんて!女の子連れてくるの初めてだし……ああ!大事件ねっ」

興奮した様子にローの発言は最早耳から流れているようだ。
青筋を浮かべて憤慨しているローがまた口を開き掛けた時、階段からカツンカツンと足音がして全員が上を向く。

「ベビー5、落ち着きなさい。それよりいつまでもそこに立たせては失礼よ?」

ミルクを混ぜた緑色の髪の女性がそう言うとローは「そうだな」と同意してリーシャへ声を掛ける。
どうやらやっとどこかへ腰を落ち着かせる事が出来そうだ。

「初めまして、私はモネ。後でお茶を持って行くわ」

階段を降りて来た人は綺麗に笑って未だ興奮が冷めないベビー5というメイド少女を連れ立って行った


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