ガラスの靴は脱いだのよ | ナノ
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「#幼馴染」のBL小説を読む
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記憶がドパッと戻った翌日、今日も相変わらず学校だ。
でも、昨日までは煩わしかった所が見違えてくる。
つまりは勉強出来る事が素直に嬉しいのだ。
前世の力って凄い。
何もかも別世界に感じる。
朝、ローの後ろ姿が見えて少し駆け足で寄ってから挨拶した。

「おはようトラファルガーくん」

「!、誰だ……?」

やはり引き気味のロー。
ここは絶対に臆さないように注意する。

「やだなー私だよ。リーシャだよ?昨日は改めてありがとう」

「はっ!?……い、いや別に……」

相手もタメなんだしこっちも少しくらい言葉を崩しても良いかと考えてから喋ってみた。
違和感がなかったようでローは思っていたより普通に返してきた。
敬語を使うのは驚かれる。
それにしてもそんなにメイクを落とした顔は衝撃的かな。
我ながら自分の顔だからそんなに見られると照れる。
ローはジロジロと無遠慮に見てくると冷や汗をかいて無言になった。

「そうだ、放課後話しがあるんだけど時間はあるかな?」

「ああ」

空気がギクシャクしているがそんなものを気にしていたら負けだ。

「おい、あれ……」

「嘘だろ!?」

「リーシャじゃねあいつ!?」

「そんなわけ……つーかスッピン?」

教室に入るとクラスメイトの視線と囁きが耳に入ってくる。
そんな些細な事で何事も疎かには出来ない。

「ねー……って、あんたリーシャ!?どうしたの!?メイクしてないじゃん!」

ギャル友の子がおっかなびっくりの声音で叫ぶ。
まるでクラスを代表したようなタイミングだ。
もしかしてトラファルガーの趣味?と聞いてくるが全く違う。
首を横に振ると怪訝な顔をする友に「今日からサボるのとか止めるから、ごめんね」と付け加える。

「え、マジで言ってんの?」

「うん。出席日数とか本当にギリギリでね……ほんと申し訳ないっていうか」

出来るだけ違和感のない話し方で、さり気なく仕方ないと思わざるおえない理由を言う。
これぞ処世術!

「へ、へえ。そっか」

「うん」

ニコニコと笑って答えると頬をひきつらせて笑うギャル友。
それはリーシャの笑みが今までと違うと察した故の対応だったのは知る由もない。
チャイムが鳴って担任が入ってくると、こちらを見て首を傾げていた。
そして、席の図を見合わせ、怪訝に眉を顰めてから名前を呼んでいく。
自分の番になったら返事をした。
面白い程目を飛び出させた担任の変顔に内心爆笑したのは秘密だ。
クラスメイト達は飽きずにヒソヒソとこちらを見ては信じられないと声を出す。
聞こえてるよ皆。
噂したい気持ちは分かるけど声が雑音過ぎて授業が聞こえない。
気持ちはよーく分かるからそろそろボリューム下げて。

(ノート全く使ってない、とほほー)

誰かから借りるなり出来ればいいのだが、生憎授業に真面目に取り組む友人が居ない。
これが今の自分の力かと肩が下がる。
全く話したことがない子に頼むと、怖くて断れなくて脅したように思われるのが分かる。
それは避けたくて、だからと言って何もしないままではノートは空白だ。
ショボンとなりながら生徒を当てようとする先生。
かれこれもう三限目になるのだが、一度も当たらない。
恐らく先生達もギャルのリーシャを怖がって当てないのかもしれないと思い当たる。
またもやしょぼくれながらお昼になったので、ここでは周りを怖がらせるからと外へ向かった。
目指すは木の下だ。
まだ夏前なので涼しいだろう。
屋上も絶景だし虫も居ないからベストスポットなのだが、あそこは不良とかの溜まり場にもなっている。
今は此処で手を打つしかないと、よっこらせと木の下へ座った。
誰も居なかったのでラッキーだ。
いそいそとお弁当を開けると冷凍食品が並んでいた。
しかし、しかしだ。
お弁当は親が作っているのでお腹が満たされるだけ感謝せねばなるまい。

「一人なんて珍しいな」

「あ、トラファルガーくん」

声を掛けられて上を見上げると立ち尽くしているローがこちらを見ていた。
答えると彼も隣に座る。
手にはおにぎり数個と牛乳。

「トラファルガーくんも一人なんて珍しいね………ん?ていうか何で私がいつも誰かと食べてるって知ってるの?」

「!……適当に言っただけだ」

明らかに肩を揺らす男に目を細める。
さては毎回ちら見してたな?
ローとはクラスが同じだ。

「そうだ。別に放課後でなくても今話せばいいのか……トラファルガーくんに話があるんだけど、今良い?」

「ああ」

やはり今の自分は違和感があるらしく観察するように目を動かす青年。

「別れて欲しいんだ」

テンポ良く言えた。

「っ、あ”!?」

咽(む)せる様に顔を上げて睨みつけてきたロー。
そんな顔はちっとも怖くない。

「どうせ数週間もしないうちに別れるんだし、別れて欲しい。今」

「告ってきたのは」

「私だけど……それが、事情が出来て付き合えなくなった」

「聞く権利がある」

「事情を?別に構わないけど聞いてもつまらないだけだよ?」

聞きたいなんて物好きだな。

「本気の恋をしたいから」

「本気の?冗談……じゃなさそうだな」

「分かってもらえるなんて嬉しい。だから別れて」

ローに再三訊ねて聞くと、難しい顔をした彼が予想外の言葉を漏らす。

「嫌だっつったら?」

「え?ごめん聞こえなかった。死にたいって?分かった。一思いにころして上げ」

「ま、待て!」

拳を振り上げるとローの制止する声に内心何を考えているんだか、と溜め息を付いた。
何だか一筋縄ではいかない予感がしてきた。


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