ガラスの靴は脱いだのよ | ナノ
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チョコバナナを食べながら講堂へ行く。
そこで演劇をやるからだ。

「楽しい?」

「ああ」

「去年はどうしたの」

「休んだ」

「ずる休み?」

指摘すると図星だった。
面白いその反応。
別に責めているわけでないけれどな。

「今年は楽しめそう?」

「ああ」

こくっ、と顎を揺らせた。

「良かった」

笑みが浮かぶ。

「来年も、楽しみだね」

「来年も」

ローがぼんやりした口調で繰り返す。
人を避けながら辿り着いた。

「人いっぱい」

周りを見回して空いているところを探すが難しそうだ。
こんなに人が居るとは知らなかった。
パンフレットや口コミで広がってこんなに居るのだと知らなかった。
今はSMSとかあるもんね。
歩こうとするとローが手をグイグイ引っ張って先行する。
どうしたんだろうと思っていると何も教えてもらえぬまま外へ来た。
外でも出店があるから来たかったのかなと微笑ましく思う。
そのままの笑みで立ち止まるロー。
ここは木の下で、体育館の裏だから騒がしさと切り離されている静かさ。
聞こえるのは葉のカサカサという音だけ。

「どうしたの?」

真剣な顔でこちらを見るから、やはり怒っているのだろうかと顔を覗く。
見下げるようにするとグッと肩を押されて元の位置へ戻される。
逆に今までそんなことをされたことがなくて戸惑う。

「おれは男だ」

え、どうしたの。
そんなの知ってる。
夏の水着回とかでも男の子だなって理解できてたからこそ、遊んだ。
それに、付き合っているままなのは男の子だからだ。
まあ女の子でも親友になれそうだけど。

「うん?」

取り合えず返事が欲しそうなので。

「お前の手より大きくて、お前よりデカい」

もしかして身体測定の結果が良く無かったのかね。

「知ってるよ?男の子じゃなかったら改名しないといけないしね」

寧ろ戸籍に不備があるととてつもなくヤバイ。
学校にだって通えなくなるかもしれない大問題として世間であーだこーだとなる。
色々未来を想像したら事件だ。

「そういう意味じゃねェ。おれはお前の彼氏だ。そこんとこ分かってんだろうな」

ぎろりと勘違いでなければ睨まれている。

「告白してきた時はお前のことなんてチリにも興味なんてなかった。だが、今は違うと断定してる」

「さすがに情は湧くよ。人間だもん」

リーシャだって、無関心からそうでもないに移行している。
そうやっていうけれど彼は納得していない顔でまた不服そうにみやってきた。

「バカみてェに鈍いぞてめェ」

彼は呆れたように言うとニヤリと笑う。
手はまだ離れない。


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